INTERVIEW(3)――取調べのようなアドヴァイス
取調べのようなアドヴァイス
――今回はカップリングにもすごく大事な曲が入ってますね。まずフルくん初の単独作詞作曲“夕立マーチ”。
古村「もともとイントロのギターのフレーズから思い付いた曲で、2年ぐらい前に音は録ってたんですけど。歌詞を完璧にしてなくて、今回改めて歌詞を書きました。とにかく右も左もわからないんで、いしわたりさんとみっちゃんに手伝ってもらってるんですけど、オレが書いた歌詞をみっちゃんに見せたら、最初はあんまりいい顔をしなくて。オレっぽさが足りないって言うんですよ。〈らしさ〉を出したほうがいいって。ほんとにあれですよ、赤ペン先生みたいな感じで」
――きっちり添削を(笑)。
光村「正真正銘、フルくんの人生で初の作詞作曲なので。僕が初めて詞と曲を作った時には小学生だったんで、何も怖いものがなかったんですけど、これが26歳にして初めて書くとなると、いろいろ経験してるがゆえに、あるべき言葉みたいなものをすごく探してしまってて。いきなり100点出そうという感覚が出てきちゃうから。最初にフルくんからもらった歌詞はまさにそういう、いきなり100点狙ってる感じだったから、〈そうじゃなくていい〉と。やりたいようにやって、恥ずかしくて表に出せないようなことも全然書いちゃっていいんじゃない?と」
――アドヴァイスをしたと。
光村「僕も最近一人暮らしを始めたので、一人暮らしのなかでのドジみたいなものも含めて書いたらどう?って言ったんですよ。フルくんが一人暮らしを始めた頃って、天気予報は夜から雨なのに、洗濯物をガンガン外に干してたりしたんですよね(笑)。そういうことも書いていいんじゃないの?っていう話をしたりして、生まれたのがこの1、2行目なんです」
――ああー。それでいきなり〈洗濯物〉が出てくるのか。
光村「そこからまた山手線ゲームみたいになっちゃって。2番で小さい頃の話が出てくるから、〈子供の頃に遊んでたのはどこ?〉〈ゲーセンかな〉って、そのまま〈ゲーセン〉が出てきたりとか」
古村「取調べみたいだったもんね(笑)」
光村「素直に言いなさい!って。最初は〈公園〉とか言ってたんだけど、〈違うでしょ? ほんとはどこ?〉〈……ゲーセンです〉って(笑)」
笠置シヅ子がキング・クリムゾンに
――ほとんど自叙伝だ(笑)。曲調もいままでにない感じの、スケールの大きなマーチング・リズムのロック・ナンバーで、また幅を広げたなっていう感じがします。幅といえば、3曲目のカヴァーもすごくて……。
光村「このカヴァーは自信作です」
――笠置シズ子“ラッパと娘”のカヴァーという、意表を突きまくりの選曲ですけど。このアイデアはどこから?
光村「今年はバンドとして、音楽的ルーツを直接明かしていく作業もしたいなと思ってるんですよね。僕は昭和歌謡みたいなものがすごく好きで、エッセンスとして曲に採り入れているし、歌詞にもそういう部分が多かったりするんですけど、そのなかでも特に好きな笠置シズ子さんの“ラッパと娘”をやりたいなと。カッコ良くて、悪くて、渋いジャズみたいなこの曲を、あえてラッパも娘もいないギター・ロック・バンドでカヴァーしたら、おのずと自分たちのおもしろさが出るんじゃないか?と。やってみたら案の定、おもしろさが出ましたね」
――これは本当にすごい。リズムもアレンジもどんどん変化していって、プログレかと思いましたよ。
光村「いつのまにかキング・クリムゾンみたいになっていたという(笑)。最初は原曲に忠実に、グルーヴ感も含めてコピーしてたんですけど、対馬くんがどんどんリズムを変えていったりして、そこに僕もおもしろがって乗っちゃったりするから。そういうふうにセッションをしていくなかで、30分ぐらい演奏していたものを一つにまとめたという感じです。1~2テイクで、ダビングもほとんどしてない。この曲を聴いてるとスタジオの様子を思い出すというか、ドキュメンタリーですね」
――ものすごく濃いシングルになりましたね。ルーツあり、初の作詞作曲あり、新しい方向性の曲ありで。
光村「全部入ってます。このシングルで僕らを知ってくれる人のためにも、何回も噛んで、噛み砕いてからでないと端から端まで理解できないというか、ちゃんと噛みごたえのあるシングルにしたいなと思っていて、そういうものになったんじゃないかと思います」