インタビュー

LONG REVIEW――NICO Touches the Walls “夏の大三角形”「Library vol.2」



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昨年発表された2枚のアルバムが共に好セールスを記録し、日本の音楽シーンにおける確かなポジションを築いた彼らの、本格的な音楽探求が始まった。2012年の第1弾となるシングル“夏の大三角形”は、それを如実に示している。

表題曲は、エネルギッシュなロック・バンドというイメージはそのままに、より広がりと透明感を増した一曲。ピチカートやオルガンといったクラシック的な意匠と、U2~キングス・オブ・レオン的なディレイ・ギターの組み合わせが、楽曲の物語性を盛り上げている。マーチング・バンド風のリズムにサビ裏でひたすら弾き続けるギターが特徴的な、古村大介による初の楽曲“夕立マーチ”もユニークだが、さらに問題作なのが笠置シヅ子“ラッパと娘”のカヴァー。かなりノイジーなエフェクトと4つ打ちに、コテコテのブルースが入り混じるという、何ともサイケデリックな仕様なのだ。CM曲やアニメの主題歌を多数こなすバンドの曲とはとても思えない。

では、なぜ彼らがこのような冒険に踏み切ったのかと言えば、それはやはり昨年の2枚のアルバムがあったからに違いない。ロック・バンドとしての自然体の姿をそのまま落とし込んだ『PASSENGER』と、制約を取っ払って自由に作る喜びを覚えた『HUMANIA』。この2枚で彼らなりのロックンロールとポップを掴み取ったからこそ、彼らは新たな一歩を踏み出すことができたのだ。

『PASSENGER』と『HUMANIA』からのPVを収録した「Library vol.2」もシングルと同時リリース。さあ、NICO Touches the Wallsがおもしろくなってきた。


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掲載: 2012年05月16日 18:00

更新: 2012年05月16日 18:00

文/金子厚武