INTERVIEW(4)――キザい歌詞が大好き
キザい歌詞が大好き
――細かいことですけど、収録曲が10曲で47分という尺も、ひとつのムードを作り上げて全体の流れで聴かせるっていうアルバムを作るうえで重要な点だったんじゃないかと。
クニモンド「いまの世代からしたら少ないって思われるかもしれないですけど、集中して聴ける時間って限りがあると思うんですよ。20曲入っちゃったら、集中して最後まで聴けないと思うんですよね。カセットテープの主力ラインって46分だったじゃないですか。そういうのって確かに大事かと。曲の流れをすごく感じることができるし、どこを切り取ってもアルバムの雰囲気が出てるんじゃないかな」
――それにしても、一十三十一さんの書く歌詞がこれまたアーバンこのうえないというか、シティー・ポッパーとしてのヴォキャブラリーをフルに発揮してますよね。
一十三十一「歌詞を書くのがすごく楽しくって、テーマが明確なのでイメージもブレずに書けましたね」
――〈銀のカブリオレ走らせて〉とか〈エクスプレスはあなたへ急ぐ〉とか……それから〈スカイスクレイパーを泳いで〉とか、キザなフレーズが目白押しで!
一十三十一「そうですね。キザいの大好きなんですよ(笑)」
クニモンド「他の人がそういう言葉を安易に使うとヘンになっちゃうんですけど、一十三十一ちゃんは昔から親しんでたこともあって世界観がしっかり出来上がってるし、選んでる言葉がしっくりくるんですよね」
――余談ですけど、マキタスポーツさんが、十八番ネタである〈作詞作曲モノマネ〉のなかで80年代のシティー・ポップみたいなものをやってますよね。〈0点の音楽〉って名付けて(笑)。
クニモンド「今回のライナーノーツで僕と江口寿史さんが対談しているんですけど、そこでもそのことについて触れてるんですよ。マキタさんも〈大好き〉っていう前提でやられてると思うんですけど、一十三十一ちゃんのやってる音楽も〈0点の音楽〉だよねって。それはある意味すごい誉め言葉というか、中身がないっていうことじゃなくて、その感覚がイイって話なんですよね」
夏の思い出といっしょに残したい
――〈感覚〉ということで言えば、最近は音楽に限らず、受け手の感覚に委ねるものが少ないような気がします。例えばCMひとつ取っても、イメージよりも明確な効能や内容を述べる傾向ですよね。
一十三十一「昔の化粧品の広告とかカッコイイですもんね。パッと見意味がわからないんだけど、想像させる楽しみを持たせていたと思います。私自身も詞を書くときにそういう意識で書いてますし、まんまメッセージを並べていくことができなくて」
クニモンド「想像力っていうのは何にしても大きいですね。歌詞の世界もサウンドも、想像力の部分を作っておかないと。ストレートに生き様を歌ったような歌詞とか、悲しい歌とかっていうのはそれでしかなくて。余白にある何かっていうのを自由に想像するのも楽しさなので、『CITY DIVE』も人それぞれのシーンが浮かび上がると思うんですよね」
――例えば、このアルバムがドライヴ向けだなあと感じた人は、部屋で聴かなくても車に乗ったときには高い確率でプレイするだろうし、夏っぽいなあって感じた人は、冬になって聴かなくなったとしても毎年夏になれば思い出してくれる。用途……って言っちゃいますけど、さまざまで。
一十三十一「私自身は、夏の思い出といっしょに残したいなっていうところもあって。なので、コンセプトが決まったところでリリース時期はここにしようとか、そういう本当に確信犯的な感じで作りました」
クニモンド「ドライヴしながら聴くのもいいですよね。実際にKashifくんがこの間ドライヴしながら聴いてたって」
Kashif「夜中でしたけど、すごく良かったですよ。ドライヴしたのは多摩市周辺でしたけど(笑)」
DORIAN「でも、〈多摩アーバン〉みたいなゾーンありますよね。おっきなマンションとか建ってて」
Kashif「まあ、ビル群みたいな景色はあるね(笑)」
クニモンド「昔は女の子とドライヴに出掛けるとき、自分が選曲したカセットテープを持ち込んでっていう……」
――いわゆる〈勝負カセット〉ですね。
クニモンド「そう。そういう意味では〈勝負CD〉としてこのアルバムを忍ばせてほしいな。今回のアルバムは80年代テイストとかっていうのもあるんですけど、単に時代懐古のことをやってるわけではないから、できれば若いリスナーにも聴いてもらいたいし、一十三十一を知らなかったっていう人にも聴いてほしいって堂々と言えるサウンドになったと思いますね」
一十三十一「そう、そう思う!」