INTERVIEW（2）——うるささの極み

MIRRORS -we’re not alone-

――昨年11月にリリースされたシングルの“MIRRORS”に関しては、前回のインタヴューでもじっくりお話を伺ったんですが、このアルバムのなかでの位置付けはどんな感じでしょうか?

葉月「アルバムのなかの位置付けは、意外と難しいですね。いま聴いても、良く出来た曲だとは思うんですけどね。こういうことをやってるバンドがいまだに出てきてないですね。これを作った段階では、もう今年の春にはこういうことをやるバンドが出てきているかなと思ったんですけど、いま聴いても斬新だし。このビートで、楽器の乗り方、歌の乗り方、すべてが斬新。で、この曲は余分な帯域をカットしたり、音を少しいじっているんです。それが予想外の方向に作用して、高音がシャキッとくるようになってて、冷たい感じがすごく出た。シングルよりも歌詞の世界に沿った音になってるんじゃないかっていう気がしますね」

――この曲のサブ・タイトルに〈we’re not alone〉という言葉を新たに付け加えたのは?

葉月「これはまあ、シングルとヴァージョンが違うということで、何らかのタイトルを付けなきゃいけないってことで。ライヴのとき、歌いきった後に〈we’re not alone〉ってシャウトすることが多くて、たぶんそれが定番化してきてるんですけど、じゃあそれをCDに入れようかってことで。シャウトはしてないですけど、一言〈we’re not alone〉って言ってるのが入っています」

――その一言をライヴで叫ぶようになったのはどういうきっかけだったんですか?

葉月「たぶん、気分が昂ぶったからだと思うんですよね。タイミングもあったのかもしれない。初めて仙台に行ったんですよ。震災があって、僕自身はあんまりそういうこと意識しない人のはずなんですけど、やっぱりそういう気持ちが芽生えたんでしょうね、で、叫びたくなったんだろうな。そうしたら、反応がすごかった。だから、そこから言うようになった気がする」

NEW PSYCHO PARALYZE

――では、4曲目の“NEW PSYCHO PARALYZE”について。僕の解釈では最初の3曲にキャッチーな曲が並んで、ここから新機軸の流れになっている感じがして。これはどうでしょう?

葉月「どうだったかな。そんなにひねくれたものを作ろうと思って作ったわけじゃないんですけど。去年の末にSHIBUYA - AXでワンマンがあったんですけど、その日の楽屋でこの曲と“EXPERIENCE”が出来たんです。そのときに考えてたのは、ベースを目立たせようっていうことかな。本人にも言ったんですけど、ベーシストがメンバーなんだよっていうことを音に出したかった。もともとは僕がずっと弾いてたんですけど、聴き返すとベースがめちゃデカいんですよ（笑）。で、彼（明徳）がメンバーに入った『I BELIEVE IN ME』を聴くと、そうでもない。もっとなんか主張したほうがいいんじゃないのってことを“MIRRORS”ぐらいから言ってて。でまあ、それのきっかけとして、ちょっとバチバチやってもらおうかって。〈スラップやってよ〉みたいなことを言いました。こういうノリ自体lynch.にはそんなにないかなと思うんですね」

――いわゆるlynch.として、やってこなかったノリだなあと。

葉月「そうですね。だから避けてたところもあると思うんですね。こういうミクスチャー的なノリって、僕のなかでちょっと古いんです。で、そこにいまあえて手を出したっていうのもあるんですけど」

――明徳さんとしては、これまでも、スラップ・ベースのスキル自体は持っていた?

明徳「そうですね。やっと使える曲が出てきたって感じですね。だからもう〈よしやったろう〉っていう（笑）。だからこれはホントおもしろい曲ですね」

ANIMA

玲央

――5曲目の“ANIMA”に関してはどうでしょう?　テンションの高さがピーク・ポイントにあるような、2分と少しのいちばん短い曲ですけど。

葉月「うるささの極みをめざしてみようかなっていう。めちゃめちゃやってみたらいいんじゃないぐらいの感じで、勢いだけで作っちゃったやつなんですけど。速すぎて、プレイするのが大変です（笑）。ライヴで歌えるのかっていう感じですね」

――プレイする側にとっては、肉体的な大変さはこの曲がピークだったりします?

葉月「僕はピークですね、完全に。でもどうだろう、弦楽器は意外と大丈夫かな?　この速さで全部をダウン・ピッキングでやれって言われたら死ぬけどね。無理なんで、もう（笑）」

玲央「ギター2人がいちばんしんどいのは“THE FATAL HOUR HAS COME”のリフかな。これはフレーズがガチガチで、全部ダウン・ピッキングで、しかも間にミュートも入れるっていう。これがいちばんつらかったんで。僕の要望で、レコーディングは最後にしてくれって言ったんです。先に録っちゃうと筋力的な問題で落ちちゃうんでって（笑）」

――ミュージシャンというよりもアスリートに近い感じがしますね（笑）。

玲央「“NEW PSYCHO PARALYZE”もそうなんですけど、鳴らしちゃいけない音を意識しなきゃいけないし、負荷がかかって、弾いてるうちに右手がおかしくなってきて。逆に“ANIMA”は、言うほどそんなにしんどくなかったです」