INTERVIEW(3)——シャウトが哀しく聴こえる
THEY’RE ALL AFRAID
――で、アルバムの流れを追っていくと、“THEY’RE ALL AFRAID”からまた感じが変わりますよね。
葉月「そうなんです。前半と後半で全然違うんですよね。結果そうなったっていう感じなんですけど。僕も後で気付いたっていうパターンです」
――この曲が出来たときにはどういう感触があったんでしょうか?
葉月「最初はもっと王道だと思ってたんです。いわゆるシングルにしやすい感じのバランスの取れた曲かなって思ったら、全然違った。歌のほうに特化した曲になったんですね。メロディー命みたいな感じになった」
――アルバムのなかでもいちばん歌謡性のある曲ですよね。ここでアルバムの流れがガラッと変わるっていうことで、バンドの見せ方という意味でもすごく効果的になった感じはありました。
葉月「もともと、順番は“ANIMA”と逆だったんです。ただ、僕が気にしたのが、5曲目にこの曲がきてしまうと、ちょっとアルバムの印象がぼやけるかなと思ったんですよね。今回は〈激しいなあ〉っていうのを、印象付けたかった。だから前半を意識してのことだったんですけど、後半にまでそんな効果的に作用するとは思ってなくて。だからそこは意外な発見でした」
EXPERIENCE
――続いて“EXPERIENCE”。これは僕の感触で言うと、後半のメロディアスで歌謡性のある流れのなかでのシングル曲っていうような印象なんですね。この曲もいろんな要素を詰め込んだ、アルバムを象徴する曲の一つという印象がありましたけど。
葉月「僕のなかではこれがいちばん新しいですね。いちばん形容しがたいものが作れたなっていう、達成感のある曲ではあります。不思議な曲だなと思うんですよね。シャウトが悲しく聴こえるというか。切ない感じがシャウトで出せてるのがいいなあって」
――この曲が最後に出来たというのは、このアルバムに向けてスピード感と激しさで畳み掛けるような曲がどんどん出来ていった、それが充実していたということの影響もあります?
葉月「そうですね、ほとんどもうこのときには曲が出揃ってたんで、ちょっと癖のあるやつがあってもいいかなぐらいの感じで。王道というか、代表格になれるものは出揃ってたんで。じゃあもう変化球を作っていこうかなっていうときの曲だと思うんですよね。ちなみに、この曲でINORANさんがギターを弾いてくれました」
――あ、そうなんですか!? これはどういう経緯で実現したんでしょう?
葉月「もともとレコード会社がいっしょで、担当してるディレクターも同じ人で。INORANさんも僕らと同じ時期にレコーディングでスタジオに入ってて、INORANさんが言ってくれたのか、うちのディレクターがゴリ押したのかわかんないですけど、〈1曲ギター弾いてくれるってよ〉っていうことになって。〈じゃあ“EXPERIENCE”のサビに何か入れてもらっていいですか〉って言って。まあINORANさんと言えばということで、あのクリーンの音数の少ないアルペジオを入れてもらったんですよね」
――この“EXPERIENCE”でお願いをしたっていうのは?
葉月「完成してるとこには入れられないんで。曲に余白がまだ感じられるとこじゃないとダメだなと思って。まあ“EXPERIENCE”も完成してたといえばしてたんですけど。入れられる余白をなんとか見つけて」
――そうなんですね。
葉月「で、〈どういうのがいい?〉って言われて、〈じゃあ、LUNA SEA中期の感じでお願いします〉とか言いながらやってました(笑)。〈やっぱ初期がいいの?〉とか言われたんで、〈いや、中期で!〉って」
FROZEN
悠介
――“FROZEN”は、悠介さんのギター・フレーズを前面に出した曲になっていると思うんですけれど、これはどうでしょう?
葉月「これは、lynch.で初めて歌メロから出来た曲ですね。ホントに何でもないときに、それこそドン・キホーテかどっかに買い物に行こうと思って歩いてたときに(笑)、サビメロが思いついて。忘れないうちに形にしようと、急いで帰ったっていう」
――最初に思い浮かんだメロディーからどういうふうに発展していったんでしょうか?
葉月「とにかくメロディーを忘れないようにずっと口ずさみながら急いで家に帰ったんですけど(笑)。それで合うコードを探して、それで組み立てていきましたね」
――この曲の2本のギターはどういうふうに構築されていったんでしょう?
玲央「曲の印象として冷たい感じが出したいっていうのを言ってたんで、アナログのあったかいふくよかな感じよりも、デジタルな冷たいアプローチのほうが良いんじゃないかって。まあ悠介のギターがすごく象徴的で、付点8分とか使って、ディレイがかかってるのがすごく良くわかる感じですね」
悠介「原曲を聴いたときに、アルペジオのイメージが強かったんですよ。そこで、イントロのアルペジオに対してのディレイのタイミングをどうするかを考えたりして。ディレイで飛ばしたアルペジオがいくつも重なってるっていうのは、原曲の段階でもともとあったんです。その部分にヒントを得たところが結構多くて。あと曲自体が冷たい感じがあったので、そこから自然に出てきたところが多かったです。この曲は基本的に自分が最初に思い描いたイメージで出来たなという印象が強いですね」
――そういう曲の冷たいイメージって、悠介さんのフィルターを通ったときにU2やスミスのような、透明感のあるギター・サウンドになるように思います。
悠介「そこは結構自分のベーシックな部分ですね。U2とかもすごく好きなんで、この曲は自分のそういった部分が素直に表現できるなっていう曲ではありました」
――スパニッシュ・ギターっぽい音も入ってますよね。
悠介「それは玲央さんが入れたアコギですね」
玲央「ああいうの好きなんですよね。ひょっとしたらなんですけど、母親がスパニッシュ・ギターをやってたんで、小さい頃に聴いて馴染みがあったからなのかもしれないですけど」
- 前の記事: INTERVIEW(2)——うるささの極み
- 次の記事: INTERVIEW(4)——背負っているものが大きい曲