インタビュー

INTERVIEW(4)——背負っているものが大きい曲



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INFERIORITY COMPLEX



――で、“INFERIORITY COMPLEX”は、アルバムのなかでは唯一6分近い長さのある壮大な曲で。しかもタイトル曲になっているわけですけれども。これは、出来た時にはどういう印象だったんでしょうか?

葉月「これは、もともとボツ曲だったんですよ」

――あ、そうなんですか。

葉月「はい。インディー・ラスト・シングルを出そうっていうときの候補曲で、“JUDGEMENT”っていう曲に負けた曲なんですけど(笑)。ただ、そのときとは構成がまったく違うんで。あの時点ではもっと退屈な曲だったんですけど。そのときのデモを久しぶりに偶然聴く機会があって、聴いてみたらリフは非常に格好良かったので、これを使ってもう1回組み直ししたら、まさかのリード曲になったっていう。奇跡の復活(笑)」

――以前はイマイチだったけれども、今回良くなったというのは、どういうところが大きいですか?

葉月「Aメロの構成とサビのメロですかね。まあ、もともとは原形しかなかったし、メロディーもなかったので、全然違うんですけど。でもいちばんグッときたのは、歌を録り終わった後です。それまで正直リードになるとは思ってなかった。アルバム曲の一つだろうなと思ってたんですけど、歌を録り終わって、エンジニアとディレクターと3人で聴いてて、〈これはすごい〉ということになった。〈いちばんインパクトあんじゃないの?〉みたいな話になった。録った瞬間からその話が出ましたね」

――この曲の歌詞についてはどうでしょう? 英詞で書かれてますけれども、〈自分は歌い続ける〉ということが、非常にストレートに歌われている曲ですよね。

葉月「まあ、それは対訳ですからね。詞じゃないんで、すごく直接的に見えちゃいますけど、どの曲も内容を暴いていけばこういう直接的なことは書けるんですよ。この曲と“EXPERIENCE”については〈なんで直接的なんですか?〉って訊かれるんですけど、あくまで詞じゃないからですっていう(笑)」

――なるほど。逆に言うと、どの曲でも自分が込めようと思ってるエモーションは、この曲に書かれているような、ストレートなものである、と。

葉月「ほとんどの曲が、こういう内容ですよ、正直。言い回しが違うだけで。結局書いてることは、自分のなかの気持ちでしかないんで」

――なるほど。この曲は一度曲が終わってから、最後にピアノの荘厳な展開になっていくわけですけれども。どういうアイデアからこういう形に仕上がったんですか?

葉月「捉え方にもよるんですけど、僕はその部分は曲のアウトロというより次の“A FLARE”に入るための一つのきっかけと捉えてますね。“INFERIORITY COMPLEX”が普通にジャンって終わって、そのまま“A FLARE”にいくとあまりにもあっけないというか。重要なのは“A FLARE”の前にあれがあるっていうことで」





A FLARE



明徳_A
明徳

――アルバムを通して聴いてくと、“INFERIORITY COMPLEX”で終わるぐらいの印象があるんですね。ここで完結して、“A FLARE”っていう曲には、ライヴのアンコールのような感覚がある。そういう意図はありました?

葉月「アンコールというのは、言われてみればそうだなと思いますけど、でも狙ったわけではないですね。いつも、アルバムのラスト曲の前に一度落とすんですよ。『I BEVIEVE IN ME』でもそうだったんで」

――“A FLARE”も、曲が出来た時に直感でアルバムのラストになる曲だというイメージがありました?

葉月「そうですね。1曲目、2曲目と、この“A FLARE”はここだなっていうのは最初っからありましたね」

――それはどういうところで?

葉月「どこにも置けないですよね、他に(笑)。なんか背負っているものが非常に大きいというか。真ん中に置くなんてとんでもないみたいな。大きな存在感を持った曲だから。僕のなかではものすごく暗いんですよね、これ。地味だし、暗いしっていう印象があったんですけど、スタッフ・チームにすごい人気だったんですよ。で、実際にタイアップもついたしっていう。〈えぇっ?〉って思ったんですけど(笑)。〈これをリード曲にしましょう〉とも言われてたんですけど、僕からしたら〈これをリードにするなんてとんでもない〉っていうくらいに暗くて、重い曲で。でも、希望が見えるとか、光が見えるとおっしゃる方も当然たくさんいて。僕からしたら意外だし、おもしろいです」

――皆さんはどうですか?

明徳「ポップな曲だと思いますね。このアルバムのなかでも特にポップな印象はあります」

玲央「このアルバムでこの位置だからすごく開けた印象が出てきますよね。今作から次の作品に繋がるっていう。前奏にあたるような9曲目終わりのピアノがあって、初めて活きてくる。開けて見えるんですよ。だからもうこの位置しかないし、この位置じゃなきゃいけないっていう印象ですね」

――わかりました。では最後に。今作は非常に凝縮した個性の濃いアルバムになっていますけれども、これを経た先のイメージは葉月さんのなかにありますか?

葉月「それがですね、いままででいちばん、次が予想できない。毎回、次のヴィジョンはすぐ出てきてたんですよ。前のアルバムを作った時に、次はもっとガッツリ狭めて、突出したものを作ろうって。自分がファンだったらそういうものを聴きたいなと思ったんで、それをそのまま叶えて作ったっていう。でも、今回は何もないんですよね」

――なるほど、じゃあそういう意味は、今作が一つの到達点かもしれない。

葉月「『I BEVIEVE IN ME』のときに〈ここが到達点だ〉って思ってたんですけど、実際は今回かもしれないですね。ここからどうするかは、いまはゼロの状態です」




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掲載: 2012年06月27日 18:01

更新: 2012年06月27日 18:01

インタヴュー・文/柴 那典