LONG REVIEW——武藤昭平withウエノコウジ 『'S Wonderful』
確固たる自信が感じられる、ヴァラエティーに富んだアルバム
『マリアッチ・パンクス』に続く2作目は、『'S Wonderful』ときた。ミュージカル映画「パリの恋人」でも有名なジョージ・ガーシュインの名曲と同じ表題が付けられているではないか。フレッド・アステアとオードリー・ヘップバーンが華麗なダンスを披露するバックで、武藤・ウエノが華麗なる演奏を披露していて――入口でそんな妄想を膨らませて遊んでからアルバムの暖簾をくぐると、いっそう武骨で猛々しいサウンドを奏でる2人がお出迎えしてくれた。
ご存じの通り、ここでの武藤はドラム・スティックをガット・ギターに握り替えて、盟友のウエノと共にロック・マインド溢れたエスニック・ミュージックを作っているわけだが、今回は彼らが生み出すグルーヴから確固たる自信のようなものが感じられ、やけにテンションが高い。
ザクザクした荒々しいカッティングを聴かせる武藤のギターも巧みに喜怒哀楽を表現していて、前作以上にゾクゾクするような、ワンダフルな快演が揃う結果に。清涼感溢れる“ブエナ・ビスタ”ほか、ここではヴァラエティーに富んだメニューも自慢だ。また気になるカヴァーも、哀愁溢れるフラメンコとなったスティングの “Englishman In New York”など、こんなふうに料理してほしかった!と思えるような超カッコイイ仕上がりとなっている。
一杯味わっただけで、天国への真っ直ぐな道がすっと伸びていくのが見える快楽盤『'S Wonderful』。ドライヴの際のご利用は、くれぐれも気をつけて。