BRAHMAN “露命”
[ interview ]
BRAHMANのニュー・シングル“露命”は、闇も光も、怒りも希望も曇りなく表現した一枚に仕上がった。前作“霹靂”同様、今作も日本語詞で統一されているのは必然の帰着と言うべきだろう。〈3.11〉以降、救援物資の搬送や〈幡ヶ谷再生大学〉と銘打った被災地でのライヴ活動を通し、彼らが見て触れて感じたものが、ここでは真っ直ぐに鳴らされている。バンドにも音楽に対しても妥協せず、限界を決めず、新しい可能性を模索し続ける彼らの現状について、TOSHI-LOW(ヴォーカル)にじっくりと迫った。
変わることは怖くない
――前回のシングル“霹靂”からちょうど1年ぶりの音源ですね。まず、作り終えた感想から聞かせてもらえますか?
TOSHI-LOW「いつも満足感はないんだけど……この3曲が出来たときは満足感というか、ちょっとそれに近いものがあった。作れて良かったというか。いつもはもっとアップアップで紡ぎ出す感じだけど、送り出せたような感覚がありましたね」
――送り出せた感覚?
TOSHI-LOW「うん……その表現がいちばん近いかも。曲作りはあまり好きじゃないし、メンバー4人で意見が合わないときもあるけど、この3曲が出来て自分たちも楽しめたから。なんか、最初のイメージよりもハミ出してしまって、〈あっ、こんなこともできるんだ〉って。結構、難しいことをやってるんですよ。みんな自分の手癖ではないところを使って、新しいことに挑戦しているから。自分もそうだけど、他のメンバーもめちゃめちゃ大変そうだった。でもそれを乗り越えていく感じが苦しいけど気持ち良い、みたいな。スポーツに近いというか、新しい技を練習してるような感じでしたね」
――新しいことに挑戦したい、というモードだった?
TOSHI-LOW「いや、そういうつもりもないんですけど、みんながどんどんそういうものに置き換えていって……いままでと違う方法論を試していたから。だけど、この3曲はBRAHMANっぽくなくはないというか、むしろ〈ぽい〉というか。自分のなかでしっくりきたし、これがいまの俺たちの感じだよねって」
編集部「1曲目“露命”の冒頭ではトロピカルなフレーズが入ってて、こういうアプローチも珍しいですよね」
TOSHI-LOW「イントロなんて出オチみたいな感じでしょ(笑)? みんなで作りながら、〈ドリフじゃん〉って笑ってて。温かい地方の民俗音楽って、俺たちわりと採り入れてなくて。どちらかと言えば、いままでは荒涼とした寒い地方の民俗音楽が好きだったから、自分のなかでは新しいなと思って」
編集部「先ほどおっしゃってましたが、自分の手癖に頼らずやってみようと?」
TOSHI-LOW「これほど長い間やってるとナァナァになってくるというか、出るものしか出ないでしょ、みたいな感じになると思うけど、いっしょに曲を作ってて、メンバーそれぞれに感じるのは、まだみんな諦めてないんだなって。それは上手くなることとかではなくて、自分が持ってる楽器に対して諦めてないし、自分のゴールを決めてないんだなと思って。それは横で見てて、誇らしく思えた。もちろん自分もそうだし、〈俺の喉はここまでだな〉と決めてかからないようにしようと。相変わらず制作は大変だし、言い合いになることもあるけど、そういう姿を見ると、同じバンドのメンバーだけど、また好きになるというか」
編集部「愛おしく感じる?」
TOSHI-LOW「うん、愛おしくなる(笑)。出尽くして、枯れて、〈昔取った杵柄〉で勝負すればいいんじゃん?って、みんなそう思ってないんですよ。まあ、上手くはならないけどね(笑)」
編集部「“露命”は曲展開もおもしろいですし、語弊のある言い方になるかもしれないですが、ポップだと思います」
TOSHI-LOW「おおー、それがおもしろいんだよね。よりコアになってるのに、よりポップに聴こえるという。“露命”は全部分解して、ひっくり返して、どうしようもないところからまた作りはじめたんですよ。アイデアはあったんだけど……そのトロピカルなフレーズだったり、どうしようかなって考えて。でもやってることは悪くないと思ったし……最終的にこういう形になりました。ああ、また嫌われるんだろうなあ。結成2年目ぐらいから、〈昔のほうが良かった〉と言われてるから」
編集部「結成2年目にして(笑)」
TOSHI-LOW「〈変わったなあ、アイツら〉とか言われて(笑)。ただ、もう変わることは怖くないんですよ。どう変わっても、俺らはちゃんと変わらないものを持ってるから。他のメンバーにもそれを感じますね。バンドマンとして幸せです」