インタビュー

LONG REVIEW――BRAHMAN “露命”



切実で生々しい現状報告



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昨年以降、何度かBRAHMANのライヴを観た。そこで確認した変化を挙げるとすれば、まずやはりTOSHI-LOWが観客へと語りかけるようになったことだろう。震災、音楽や思い出、これからどう生きるかについての話――それらは聴き手を勇気づけ、励まし、時に大笑いさせたりもする。だが、その言葉は時に、自分たちが前に進む決意と覚悟を再確認し、それを鼓舞するためにあるようにも聞こえた。

そしてここに届いたニュー・シングル“露命”。昨年のシングル“霹靂”と同様、全曲日本語詞だ。“霹靂”は〈3.11〉の大きすぎる被害と哀しみを連想させる歌詞が印象的だったが、今回のシングルには、彼らが現在抱える思いと感情が刻み込まれている。

まず“露命”は静と動のコントラストがダイナミックに展開される、いかにもBRAHMANらしい1曲。ヴァンパイア・ウィークエンド以降のトロピカル・テイストを思わせるクリーン・トーンのギターも新鮮だ。露のように儚い命を繋ぎ、(伝えるべきものを)伝えていくことが歌われる詞には、彼らが多くの仲間たちと継続して取り組んでいる被災地支援も連想させる。

2曲目の“警醒”は耳慣れない言葉だが、〈警告を発して人の迷いを覚ます〉という意味だ。グランジ調の重々しいギター・リフが徐々にBPMを上げていくと、彼らには珍しいストレートでシンプルなハードコア・パンクに展開。2分足らずを少ないコードとシャウトによって全力で駆け抜けるサウンドと歌詞からは、怒りや憤りが伝わってくる。

そして3曲目は“鼎の問”。MVの非公開も議論を呼んだこの曲は3拍子のミディアムで、強大なエネルギーを爆発させて聴き手を昂揚させるのではなく、それを沸点ギリギリで保ったまま、しっかりと歩みを進めていくような力強くメロディアスな楽曲だ。タイトルにある〈鼎〉とは、王位の象徴。以前の彼らの歌詞は、己の内面に向けて言葉を研ぎ澄ませる求道者みたいな印象があったが、ここでは外へ(そして権力者へ)向けた意思表示も窺える。もっとも、彼らの歌詞はその矛先をいかようにも解釈できるものであり、単にこちらの聞こえ方が変わっただけなのかもしれない。

それでも3曲を通して聴くと、その音と言葉から、上述したような〈いま彼らが感じているもの〉がヒリヒリと伝わってくる。そして、その思いはバンド自身にも、被災地にも、為政者にも、そしてもちろんあなたにも向けられている。BRAHMANの現状報告に刮目してほしい。


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掲載: 2012年09月05日 18:02

更新: 2012年09月05日 18:02

文/鬼頭隆生