INTERVIEW(3)——すべてが表裏一体
すべてが表裏一体
――今作を聴いたときに音楽と日常が地続きで、もはや切っても切り離せないものになっているんだなと感じました。
TOSHI-LOW「話すのも言葉だし、歌うのも言葉だなと思って。言葉じゃないものを伝えるためにも言葉になっていくというか。例えば動きを伝えるためにも言葉が必要になってくるし……武道家の人の本を読んでも、すごく難しい表現をしてて。言葉じゃないものを言葉にすると、余計に言葉が必要なんだなって。そう考えると、俺がいま使ってる言葉は何だろうと考えたりするしね。でもいま自分のなかから出てくるのは、難しい言葉ではないなと思って。だから、“露命”とかはギリギリっすよね(笑)」
――ははははは。
TOSHI-LOW「これ以上、難しくするとダメだなって。言葉の質だったり、重みだったりね。もちろん選んではいるけど、探したという感じでもないし、スルスルッと出てきたものですね。前に話したかもしれないですけど、〈3.11〉以降、近くの神社に行って、〈今日一日しっかり生きれますように〉って手を合わせていたのが、2012年からいきなり変わったんですよ。〈生きれますように〉じゃなくて、〈いつ死んでも構わない〉と思うようになって、そのときまでよろしくお願いしますって。それからスッと自分のなかで抜けた気がするんですよね。ほんといつでもいいんだなと」
――死ぬことが?
TOSHI-LOW「うん、それが今日でも、30年後でも良くて。今日一日何がなんでも!ではなくなった。2011年は今日一日フルで生きれますようにと祈っていたけど……ずっとそう考えてると、どうでも良くなった。すべてが自然でいいんじゃないかなと。天命というか、普通に自分の生を受け入れていけばいいんだなと」
――なるほど。
TOSHI-LOW「どこか諦めるというか、受け入れてる感じがあるかもしれない。どっちが居心地いいかと言えば、受け入れるほうが生きやすいのかなって。こんな時代でしょ? 国もめちゃくちゃじゃないですか? 経済も明るいことは見えないし……みんなが暗くて重いから、俺は生きやすいんですよ(笑)。自分が暗くて重かったから、みんながそうなったら、逆になるんですよね。小さい頃から幸せなんて嘘っぱちだと思っていたからさ。いまは現実がすごくリアルで、沈む泥船に乗っているようなものでしょ? そうなると、逆に生きやすいというか、もがかなくていいなと。まあ、すべてが表裏一体だと思うんですよ。ただ、死ぬのが怖くなくなったのは良かったかなと。いや、怖くはなかったけど、意識していたということは捉われていたんでしょうね。何かに憑りつかれてる感じはなくなった。2011年にいろんなことを自分のなかで取っ払ったから。震災はなかったほうがいいに決まっているけど、俺はあの地震で自分のなかにある壁がなくなったし、いろんなわだかまりが流された。でも更地になったときに自分は何を建てるのかなと思ったら、いまは何かを建てる必要もないんじゃないかと思って。杭を打つ必要はなく、ただなくなったということをなくなったと受け入れるほうがいいなと」
――とはいえ、今作には怒りや希望もちゃんと込められてますからね。あの、唐突かもしれませんが、いまのTOSHI-LOWさんは、〈命〉という言葉から何を連想しますか?
TOSHI-LOW「何だろう……結局、何を話してもそれ以上のものはないと思うから。それで“鼎の問”のPVもああいう感じなんだと思うし。命に替えられるものなんてないでしょ? それ以上に大切なものなんてないじゃないですか。だから、大事にしましょうよという話しでもないんだけど。そこで死ぬのも天命だろうし、だけど、怒りは一杯ある。それがすべて今回のシングルには素直に出てるかな」
――わかりました。気は早いかもしれませんが、この後のリリースがとても楽しみです。
TOSHI-LOW「全然ストックないっすよ!」
――あっ、そうでしたか。
TOSHI-LOW「ないない。空っぽの状態です。そこは空っぽにしなくていいじゃないのって、話ですけど。曲の欠片みたいなものはたくさんありますけど、欠片は欠片ですからね(笑)。毎回作品を出すたびに変わったと言われるし、毎回前の作品のほうが良かったと言われるけど、それも慣れてる(笑)。けど、同じことをやってもしょうがないし。いまは素直に自分に響くものをやりたい。10数年バンドをやって、4枚しかアルバム出してないけど、だからこそ曲も深くプレイできるようになったし。で、今回の3曲も、30分のライヴでも全部入れてるんですよ。普通は新曲って、みんな知らないからテンション下がるじゃないですか。でも全然違和感がないから、響いてるのかなって。まだ次のアルバムはまったく見えてないけど、作りたいなあと思ってます。自分たちもワクワクする部分があるってことが、わかったわけだから」