INTERVIEW(2)——歌うことに違和感がなくなってきた
歌うことに違和感がなくなってきた
――新しさという点で言えば、2曲目“警醒”もTOSHI-LOWさんがメイン・ヴォーカルを務めてなくて。これも斬新かつユニークな仕上がりですね。
TOSHI-LOW「もはや自分で歌わなくていいんじゃないかと思って。自分にしか歌えない歌があると思ってるし、だからこそ、別に誰が歌ってもいいと思ってる部分もあるし。矛盾しているかもしれないけど、〈俺じゃなきゃ俺じゃなきゃ!〉と思っていたことの究極が、俺じゃなくていいみたいな(笑)」
――ははははは。
TOSHI-LOW「伝われば誰が歌ってもいいんじゃないかって。考え方が固着するよりも……できる限りフラットでいるのがいちばん強いんじゃないかなと思って」
――そして、3曲目“鼎の問”ですけど、これは本当に名曲だと思います。
TOSHI-LOW「〈名曲〉出たっ!」
――ものすごく声がデカいです(笑)。
TOSHI-LOW「いや、名曲とか言われたことないから。それ太字で書いといてください(笑)。やっぱり自分以外の人に響いてもらいたいし、だからこそ、自分に響かないものを歌ってもしょうがないし。じゃあ、俺に響くものは何なんだろう?って、それが出てるんじゃないですかね。“鼎の問”はRONZI(ドラムス)がコーラスしているんですけど、歌いやすいと言ってて。ああ、しっくりくるんだなって。だから、いまは出てくるものを素直にやってますね」
――“鼎の問”は今年復活したイヴェント〈BAD FOOD STUFF〉(註:97年にBACK DROP BOMB、BRAHMAN、SCAFULL KING、SUPER STUPIDの4バンドで始めた名物イヴェントの4月28日・新木場STUDIO COAST公演)に出演した際、いきなり1曲目で披露してくれましたよね。TOSHI-LOWさんが〈3.11〉以降にMCで言ってきたことを、そのまま歌詞にしたような内容で驚きました。
TOSHI-LOW「それも恥ずかしくなくなってきたというか、もっとあけっぴろげになってますよね。どう捉えられてもいいと言いながらも、格好良く見せたいと思っていたところもあったし。いまは本当にそのままだし、これがダサいと思われてもいいやって。それは自信があるとかじゃなくて、歌うことがやっと自分のなかで違和感のないものになってきたというか。基本的に歌うのが大っ嫌いで、15歳のときから歌いはじめてもう20年経つけど、初めて歌いたいと思うようになった。ライヴで心を込めて歌いたいなあと思うし。〈歌〉というのも歌手みたいな言い方で嫌なんだけど(笑)。機会があったら、もっと歌いたい。俺、歌いたいんだって、そこに素直になってますね。頭下げてでも〈歌わせてください〉って」
――今作で聴ける歌心やメッセージ性を含めて、伝えたい、届けたいという気持ちのほうが強くなっていると。
TOSHI-LOW「うん、伝わらなくてもいいと言いながら、その裏には伝えたいという気持ちがすごくあるし。正確に伝わるものなんてないと思っているけど、伝えたいものがあるから歌っているんだろうし。そこに関しては、要らないフィルターは必要なくなってる。だから、作り出す楽曲もそうだし、ライヴもそうだけど……グッと人生と近くなってる気がする。いままでは非日常がバンドの活動だったり、ライヴだと思っていたけど、うわー、生活なんだな、日常なんだなって。やっとそこを受け入れられてる自分がいるというか。こんな生活を10何年も続けているくせに(笑)」
- 前の記事: BRAHMAN “露命”
- 次の記事: INTERVIEW(3)——すべてが表裏一体