INTERVIEW(3)――バランスなんか取れない
バランスなんか取れない
――次はライヴDVDの話をしましょうか。これ、かなりおもしろいシチュエーションになってますね。
「近い将来、2000~3000人入るところでライヴをやりたいという願望があるので、先にやっちゃえと。それで〈みんなを待ってるよ〉という作品なんですけど。もう気持ちだけ先走っちゃったみたいな(笑)」
――当日は普通にライヴに臨むリハーサルをやって?
「そうです。カメラの人だけしかいなくて、ホント寂しかった(笑)」
――やってみてどうでした? 歌いながら考えていたこととか。
「けっこう不安だったんですけど。もちろんやったことないし、このくらいデカい会場っていうのも初めての経験だったので、どこに向けたらいいのかな?というのがあって。物理的なことを言うと、カメラに向かってということはあるけど、気持ちはどこを向けばいいか?というので……母ちゃんを想像してましたね。母ちゃんが観に来てくれてるって。それで臨んだら、大丈夫でした」
――MCの時も、「亡くなったお母さんが聴いてくれてる」と?
「うん。その時はそうでした」
――前にインタヴューさせてもらった時に、「ライヴ中は無意識でやりたい」と言ってたけれども。
「それは変わらないです。でも誰かに向かって、みたいなことを考えておけば、身体のなかにそれが残っていて、いい感じになるんでしょうね。基本的には何も考えずにやってるんですけど」
――ひゅーいくん、歌う時に笑っているようにも見えるし、放心しているようにも見えるし、不思議な表情をするでしょう。
「そうなんですよ。気持ち悪いですよね」
――そんなことはないけど(笑)。
「ギターの音もドラムの音も好きだから、そういうので笑ったりしますよね。いいね!みたいな感じで」
――そして、このライヴDVDのコンセプトは、〈実際にライヴに来てほしい〉と。
「そうですね。先にやってるから、これを観て、よかったら来てください。曲も、普通にライヴでやっているものをそのままやっているので」
――本編は7曲だけど、特典映像にもだいたい同じくらいの長さで、8月の渋谷と3月の仙台でのライヴの映像が入ってます。
「こっちはワンマンの、人が入っているライヴ。人が入っている映像を観るとホッとしますね(笑)」
――今年、ここまでのライヴの手応えや、意識の変化はあります?
「何も考えなさすぎて、グジャグジャになっちゃって、歌を聴きたい人に申し訳ないかなと思った時期があって。反省して、バランスを整えようかなと思ったんですけど、結果、バランスなんか取れないということに最近気付いちゃったんですよ。だからもう、グジャグジャをどう見せるか?というか、認めちゃうしかないなという感じです。でも、それで喜んでくれる人も目に見えて増えてきたから。おじさんとか」
――あはは。おじさんウケがいいんだ。
「大阪で、すごく目がキラキラしてるおじさんがいたんですよ。子供みたいな目で。なんだこの人たちは?みたいな、そういう人たちが熱狂してくれてて、いいなあと思います。おじさん世代の人たちに好かれるんですよ、なんか知らないけど。昔臭いのかな」
――どうなんだろう(笑)。でも、かなり年上の須藤晃さんに見込まれたのもそうだし、世代を超えて反応するものがあることは間違いないと思います。
「そうなんですよね。僕的には、女子高生とかにもライヴに来てほしいんですけど(笑)。そこをめざしつつ、おじさんも大切にしたいし。どちらにしても、嬉しいですね」
音楽がリアルな生活と直結してる
――今年はこれがリリースで収めということで。ちょっと早いですけど、来年はこういう年にしたいという抱負があれば。
「来年は、タバコやめます」
――そう来たか(笑)。
「今年は吸うけど、来年はやめます。メジャー・デビューする前はタバコやめてたんですよ。メジャー・デビューするからタバコ吸おうと思って」
――なぜ?
「なんか、ロック感出さなきゃいけないと思って」
――なんだそりゃ(笑)。
「ロック感が足りないと思って、タバコ吸いはじめたんですよ。でも来年はきっぱりやめて、高みをめざす年にしたいです。今年いっぱいやって、ロック感を培って、それを忘れずに」
――今年がメジャー・デビュー・イヤーで、これがファースト・シングル。いまは自己紹介の段階にいるというか、いろんな曲を出してどんどん知ってもらいたいという気持ちがある?
「そうですね。でも、何も考えてないかもしれない。いままでやってきたことをそのままやり続けて、ただ音楽を作るというだけです」
――逆に何か始めたいことは?
「あんまり考えてないんですけど。でもちょっとだけ考えてるのは、ブルースを勉強したいということ。勉強というか、採り入れるというか。最終的にトム・ウェイツみたいになりたいので。いまはたぶん、音からはそういう気配はあんまり感じ取れないと思うんですけど、そこに興味があります。でもトム・ウェイツみたいなのって、ブルースって言うのかな。カントリー? フォーク?」
――ジャズとか、そのへんはいろいろ混ざってると思いますけど。トム・ウェイツは、前のインタヴューのときにも言ってましたね。
「そういうのを、採り入れていきたいので」
――今回のライヴDVDにも、ピアノの弾き語りの曲でそういう部分は感じられるところもあるし、言うほど遠くはないと思いますよ。
「土臭さみたいな、ああいう感じがすごい好きだから。いまはたぶんめっちゃポップで、ポップなのは全然いいんですけど、そういうテイストを加えていこうかなってちょっと思ってます」
――そもそもひゅーいくん、10代の頃はバリバリのハードコアだったわけでしょう。その後はギター・ポップ的なバンドをやって、いまはまた違うスタイルでやっていて。
「あの頃には想像できないですよね」
――さっきも言ってたけど、自分が生み出した音楽に影響を受けて、自分も変わっていくみたいなところがあるのかもしれない?
「そうなんだと思います。音楽って、リアルな生活と直結してるなと思うんですよね。ライヴをやらないと身体の調子が悪くなっちゃうし。ライヴをやるとすごい調子が良くなる。気持ちも身体も。常にライヴをやっていたいとは思ってます」
――次の目標は、今回のライヴDVDと同じ会場にいっぱいのお客さんを入れて、〈キミがいるLIVE〉のDVDを出すことですかね。
「そうですね。撮りたいですね、いつか」