ジャンク フジヤマ “シェダル”
[ interview ]
新年をことほぐに相応しいジャンク フジヤマのサード・シングル“シェダル”がリリースされた。メジャーからの第1弾“あの空の向こうがわへ”、より強力なメロディーとグルーヴを携えた第2弾『PROUD/EGAO』ときて、今回もまた目の覚めるような爽快なポップ・チューンが届いたわけだが、いつでも直球ストレートといったようなこのスタイルが彼の流儀なのだと改めて認識させてくれるし、ジャンク フジヤマという音楽家の懐の大きさが実際どのぐらいなのか、はっきりと見えはじめてきた。豪快な投げっぷりを見せる彼を支えているのは、大滝詠一との仕事で知られる井上鑑をはじめ、またまた豪華なミュージシャンたち。これほどワガママなシングルもない、と思わせるほどにゴージャスな仕上がりだ。
ある意味で妄想に近い世界
――メジャー・デビュー・シングルから本作まで変化球を挟み込まずに、どストレートなナンバーを投げ続けてきましたね。
「まぁその、変化球というか玄人好みな楽曲はカップリングに収めて、より多くの聴衆に聴いていただけるように意識してきましたから」
――いやいや、ひたすらキャッチーでハイ・レヴェルな3連発は、かなりのインパクトがあったんですよ。
「今回の“シェダル”はメロディーのストレートさを意識していますね。前の“proud”は間奏らしいものがなく、ずっと走っていくような休み時間のない曲だったんですけど、新曲は構成において聴きやすさというかポップになるように考えて作りました」
――ライト感をより意識したってことですかね。
「そうですね。そもそも一貫して考えているのは、歌詞に強いメッセージ性を込めたりせず、重くなりすぎないようにする、ってこと。僕は、聴いた人がニュートラルに捉えられるような楽曲を求めて作ってますから」
――最近、音楽は現実逃避のための道具であってもいいじゃないか、って考えることが多いんだけど、この新曲に〈間違ってない〉っていわれた気がしました。
「はい、はい。歌詞を書くときには、理想郷とは言わないまでも、とても煌びやかで美しくて、なおかつ妖艶、という雰囲気を大切にしているんですよ。それはこのジャケットを見てもらってもわかるはず。大海原が広がっていて、海抜が低いんだろうなっていうこの景色(笑)。ここには、この海へと乗り出していこう、自分のめざす方向へ行くんだっていう意志も表しているんですけども」
――やっぱり、理想を描きたいという意識は強いですか?
「現実を直視したものを書こうとしても、近頃はそんなに明るい話題もないですからね。そういう情勢を切り取ってしまうと、音楽においてまでそういうつまらない体験をしなければならないのか?ってことになるので。もっと言えば、音楽は娯楽のひとつのツールでしかない。こんなに娯楽が溢れているなかで、あえて音楽をチョイスし、身銭を切って楽しもうとするわけですよね。そのことを考えたら、やっぱり美しい世界を描かないと駄目なんじゃないかな。ヒップホップのように、〈いっしょに参加しないか?〉って問い掛ける音楽もある。でも僕の場合は、プラネタリウムに映し出された星空の世界にいるんだ、みたいな、ある意味で妄想に近い世界を作り出そうとしている。それぐらい綺麗なものであっていいんじゃないかなと」
――まあ、ジャンク フジヤマの場合、人間臭い部分はヴォーカルがその役割を果たしていますからね。
「ハハハ、そうかもしれないですね。歌がこれだけガッツリきちゃうので、歌詞にメッセージまで乗せてしまうと重苦しいというか何というか(笑)」