おとぎ話『THE WORLD』
[ interview ]
ROSEから2枚のアルバムを発表したおとぎ話が、久々に古巣のUKプロジェクトへ戻り、ニュー・アルバム『THE WORLD』を発表する。2009年にリリースされた『青春GALAXY ep.』収録の“GALAXY”が再録されているなど、彼らの音楽性の基盤となっている90年代初期のUSオルタナ感が前面に表れていながら、アーケイド・ファイアをはじめとする近年のフェイヴァリット・バンドのテイストとも見事に融合した『THE WORLD』は、実におとぎ話らしい、キラキラとした光に満ち溢れる名盤だと言えよう。
ここでは、新作についてはもちろん、踊ってばかりの国や青葉市子といった後輩アーティストとの交流、さらには音楽業界の未来に至るまで、有馬和樹(ヴォーカル/ギター)にじっくりと語ってもらった。
自分の音楽を改めて見つめ直した
――まずは、久々にUKプロジェクトから作品を発表することになった経緯から話していただけますか?
「(UKプロジェクトから発表した)最初の3枚は、まだレコーディングのノウハウもわからない頃の僕らに声をかけてくれた北島さんっていう方がいて、その方に導かれるままやってたんです。そうやっていくうちに、有馬和樹のソングライティング力が前に進んで、それにバンドが追随するという形になっていき、そのやり方でいろんな人から支持を得ることはできたんですけど、バンドのなかでの速度感が違っちゃって、僕だけ先に行ってるような感じが嫌になっちゃったんです」
――そこの修正が必要になってきたと。
「それで一種の癒しの作業というか、自分たちだけでレコーディングをしてアルバムを作ってみて、その作品を聴いてくれた曽我部恵一さんが〈手伝うよ〉って言ってくださって、ROSEから2枚アルバムを出してもらいました。そこで気付いたことも多かったし、自分たちがやりたいことを見つめ直すことができたんです。あとはやっぱり〈3.11〉の地震があって、そこでも自分の音楽をもう一回見つめ直すことになったんですね。それで、〈次にアルバム出すんだったらどうしようか?〉って話をしてるときに、いちばん最初におとぎ話を愛してくれた人ともう一度仕事をしたくなったので北島さんに声をかけて、またいっしょにやることになりました」
――震災で見つめ直したのは、特にどんな部分でしたか?
「それまでに自分たちが書いてきた曲が、こういうときにもちゃんと有効な曲なんだっていうのを信じることができたんです。いまの日本の現状から目を背けるのって、あり得ないことだと思うんですけど、日本で歌ってる人は大体自分のことしか歌ってないような気がするんですよね。そう思ったときに、もっとちゃんとしたメッセージがあって、〈届けたい〉っていう意志を持ったロック・バンドとして、僕らはやっていかなきゃって思ったんです」
――今回のアルバムには“GALAXY”の再録が収録されていますが、まさにいまの時代により響く曲だと思いました。
「“GALAXY”は当時『FAIRYTALE』(2010年)ってアルバムに入れることもできたんですけど、頑なに〈入れたくない〉って固辞したんです。何でかっていうと、あのアルバムの他の曲とは響き方が違っているし、時代の先を見てる曲だなって感じがしてたんです。それから震災が起こって、ホントにあの曲のような世の中になっちゃったんですよね。あれは世の中が疲弊したときに、それでも愛を歌うっていうつもりで作ったので……だからいま思うと“GALAXY”が契機だったかもしれないです。“GALAXY”をもう一回何らかの形で出したいと思って北島さんに連絡したので、あの曲が導いてくれた感じがありますね」