INTERVIEW(2)――音楽に対してフラットな若い世代からの刺激
音楽に対してフラットな若い世代からの刺激
――2012年は踊ってばかりの国や青葉市子さんといった若手との共演も多い1年でしたが、それこそ曽我部さんのように、今度は自分たちが若手を引っ張っていく番だというような気持ちもあるのでしょうか?
「その意識はありませんね。ただ個人的に、青葉市子さんと夏に出会えたのはすごく大きかったです。下津(光史、踊ってばかりの国)もそうですけど、10個ぐらい下の世代っていうのは、世間での評価なんて全然関係ないんですよ。なぜかっていうと、音楽雑誌とかを読むよりも先に、自分が興味ある音楽は時代関係なくYouTubeなどで知ることができたんですよね。僕たちの学生時代は雑誌やラジオなどのメディアのフィルターを通過した情報しかなくて、そのなかで起こってること(紹介されているもの)しか考えられない世代だったから、そこから外れたものを目の当たりにするとウワッて思っちゃうんですよ」
――いまの若い子たちはもっと許容範囲が広いですよね。
「自分の目で見て、感じたもののカッコ良さっていうのを理屈じゃなく理解してる人が多いので、僕たちがそういう人たちを先導するっていうよりも先に、彼らといっしょになって音楽をやりたいんです。上に立って引っ張るんじゃなくて、彼らと本気になって音楽を、会話を楽しみたいと思って」
――おとぎ話はそういう若い人たちからもしっかり支持されてるバンドだと思います。
「音楽っていうものに対してフラットな目線の人たちがすごくおもしろくて、彼らは〈カッコイイかカッコ悪いか、それだけでしょ〉って感じなんで、いっしょにそういう世界を見てみたいんですよね。もうもともとある日本の音楽業界のセオリーには囚われなくなって、気持ちが楽になったんで、彼らにはホント感謝してます」
――近い世代でそういう感覚を共有できるバンドはいないですか?
「ほぼ、いないっすね。(近い世代のバンドは)やっぱり囚われてますよね。もっと若いバンドのほうが全然(広く)見てますよ。(踊ってばかりの国の)“セシウム”って歌を聴いたときも思ったのが、彼らはすごくネガティヴに見えるけど、めちゃくちゃ希望を歌ってるバンドだと思うんです。真剣に言葉を落とすっていうことを考えてる人が好きで、若い人のほうがリアリティーを持って言葉が迫ってくるというか、いまの時代に歌うべき言葉を知ってる感じがします。そういう世代の表現者に支持されるっていうのは、自分は間違ってなかったって思えるんで、すごく感動もしてます」
――『THE WORLD』からは90年代初期のUSのオルタナ感を強く感じたのですが、そこは意識的な部分でしたか?
「いや、それはなかったですね。最近のアメリカのバンドに90年代初期っぽさがあるとは思いますけど、個人的にはいつも通り〈フレーミング・リップスが新しいアルバムを作るならどうするか〉なんて考えてたんで、時代性はそんなに考えてなかったです」
――例えば、1曲目の“OTOGIVANASHI WILL NEVER DIE!!!!!!!!”というタイトルは、カート・コバーンが死ぬ前に歌詞を書き遺したというニール・ヤングの“Hey Hey, My My”のなかの〈Rock and roll can never die〉というフレーズを連想させるし、この曲にはLOSTAGEの五味岳久さんが参加されていますが、LOSTAGEもやはり90年代初期のオルタナ感を持ったバンドの代表だと思うんですね。
「あー、なるほど。まったく考えてなかった(笑)。この曲は単純に〈まだ死なないぞ〉って言ってるだけって感じだし、五味の兄貴がレコーディングに遊びに来てくれて、だったら〈DIE!〉って叫んでほしいなと思って(笑)。そういうふうに捉えてくれるのは新しい見方なのでおもしろいですけど、もっと最近のアメリカのバンドのことを考えてたかな」
――90年代感みたいなことで言うと、クラウド・ナッシングスとか?
「僕、サーファー・ブラッドってバンドがすげえ好きなんですよ。クラウド・ナッシングスは、すげえわかりやすく日本人が好きな感じのグランジ・テイスト満載だから、少し恥ずかしくなっちゃって(笑)。もちろん、あれはあれで好きなんですけど。でも、ああいうなかですげえポップな人が好きなんです。サーファー・ブラッドはライヴを観たんですけど、普通にシールドが断線して音出なくなっちゃったりとか、そういうのが嬉しくて(笑)」
――海外のバンドでその感じ、いいですね(笑)。
「外人のバンドに〈がんばれ!〉って初めて言いましたからね(笑)。そういう意味でも、ポップなバンドが良くて、このアルバムだと、あとはダム・ダム・ガールズ、シンズとか……でもいちばん強いのは結局アーケイド・ファイアかな」
――アーケイド・ファイアの感じは引き続き入ってますよね。では、日本のバンドで参照点になったバンドはいますか?
「このアルバムはサザンオールスターズですね。サザンは昔から聴いてたんですけど、2011年の暮れぐらいからオリジナル・アルバムを全部集め出して、また聴くようになったんです。80年代のサザンってすごく野心的で、好きなんです」
――海外との距離感を考えながら、それをいかに日本でやるかっていうことを実践してきたバンドですよね。
「めちゃくちゃ洋楽ですよ、ホントに。『タイニイ・バブルス』って3枚目のアルバムがすごく好きなんですけど、それは当時のリトル・フィートとか、レイドバックした感じがありつつ、日本の言葉で歌って、すごくソウルフルなんですよね。そういうアルバムのスタイルをそのままやるんじゃなくて、いまの日本の若者が作ったらどうなるんだろうっていう意識のもとに作ってた感じはします」
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