インタビュー

INTERVIEW(2)――他人と違う部分は誰にでもある



他人と違う部分は誰にでもある



泉 沙世子

――そういった地道な活動を経て、受けたのが〈ドリームボーカルオーディション〉。

「はい。オリジナルを作るようになって初めて受けたのがそのオーディションだったんです」

――あっ、そうだったんですね。それまでレコード会社にデモテープを送ったりとかもしてなかった?

「〈ドリームボーカルオーディション〉を受けるときと同時に送ったのが一回ありましたけど。ホント、オリジナルで自信を持って出せる曲を書けたのが最近のことなので、それまではまったくで。やはり、さんざんオーディションに落ちた、それも最初のほうで落ちたっていうよりは、いつも最後の10人ぐらいのところまでは行ってたので……それって、ちゃんと聴いてもらえてるはずなのに、耳に留まってないってことじゃないですか?」

――そうですね。

「なので、闇雲に受けても意味ないかなって。受けることよりも、自分の納得できるものができるまでは、地道に力をつけていくことが大事だなって思ってました」

――自己分析はちゃんとできていたという。

「ああ……(笑)。まあ、かなり試行錯誤してましたけどね、ずっと。なんていうか……発信してなかったと思うんですよね。歌うことはすごく好きだったんですけど、私はこういうことを言いたいとか、これを歌にしようっていう明確なヴィジョンを持っていなかったんですね。〈ヴォーカリスト〉として成功する人もいると思うんですけど、私の場合、それだけでは不足してるんだろうなあって」

――テーマを見つけるというのは難しい作業ですよね。

「そうですね。最初のうちはホントにもう、テンプレートみたいな、可もなく不可もなく、綺麗にまとまったものを作ろうとして、嘘くさいものばっかり出来てました」

――○○っぽい感じの曲……とか。

「そうです、そうです」

――ところでどうなんでしょう? 泉さんの歌からは、聴き手の背中を押してくれたり、元気を与えてくれるような優しさを感じ取ることができるんですが、それっていうのが波瀾万丈な人生や挫折感から生まれて来たような類とはちょっと違うなって思うんです。わりと普通に生きてきたなかで芽生えたものとでもいうか、それがむしろ聴き手にとっては入り込みやすい魅力になってるんじゃないかと。

「確かに波瀾万丈な人生は歩んでないですね(笑)。たぶん私自身は、波瀾万丈な人生を歩んでる人というか、〈この人クレイジーやわぁ!〉っていう人にすごく憧れがあるんですよね。誤解を恐れずに言うと、常識から逸脱している人がかっこいいとか、カリスマ性を感じたりとか、そういうところがあるんです。でも、どんな人にも本音を言わせれば〈はぁ、何考えてんの?〉っていうところって絶対にあるじゃないですか。だから、自分が他人とかけ離れてるとはあまり思わないですけど、他人と違う部分はあると思うし、それは誰もがそうだし、そういう部分をうまく出していきたいっていうのが私の歌の課題かなって思いますね」

――サウンドのことで言うと、今回リリースされた“境界線”を含め、カップリングなどすべての曲でアレンジャーを変えてますよね。そこも課題の一環なんでしょうか?

「誰にお願いするとかっていう部分では、正直、言えるほどの知識はないので、自分で決めているわけではないんですが、今後〈この音が泉沙世子〉っていう音を作っていけるように、ベストな状態に持っていけるように、っていうところをめざしてのことではありますね」

――デビュー・シングル“スクランブル”のアレンジは白井良明さんで、かなりファンキーな感じでした。

「自分の書いた曲がアレンジでこんなに変わるものだとは思わなかったです。びっくりしましたし、私が〈ここは抜きたくない!〉っていう部分を活かしつつ、自分の想像を超える出来上がりになったので、すごくうれしかったですね」

――そのカップリング“飛行機雲”はウルフルケイスケさんのアレンジで、70年代のサザン・ロック風だったり。

「私、汗臭いとか泥臭いとか埃っぽいっていう音楽が好きなんですよ」

――公式プロフィールに〈ウルフルズをこよなく愛する〉ってありますもんね。

「そうなんです。なので、ケイスケさんにアレンジしていただいたことで、ウルフルズさんの仲間に入れてもらえたような気分になれて感動しました(笑)」

――そして“境界線”は、EXILEやJUJUさんを手掛けるヒットメイカーのJin Nakamuraさん。ある意味クセのある前作から一転、アコースティックな質感でわりと歌と言葉を聴かせるアレンジになりましたね。

「“境界線”は私にとって大事な曲で、歌詞の内容は〈頼ってもいいから〉っていう受け容れる側の気持ちで書いてるんですけど、この詞を書くきっかけになったときの実際の気持ちっていうのは、私自身がそういう言葉をかけてほしいと思っていたんですね。やはりこの曲に関しては、〈音楽〉というより〈歌〉っていうイメージのほうが強いですね。歌があって、それを支えるように音がある感じ……ですね」

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年01月30日 18:01

更新: 2013年01月30日 18:01

インタヴュー・文/久保田泰平

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