INTERVIEW(2)――自分たちのやりたいことがバランス良く出せた
自分たちのやりたいことがバランス良く出せた
――改めて振り返ると、去年のメンバー・チェンジはすごく大きな出来事でしたよね。バンドにとって。
「大きいですね、やっぱり。2011年の暮れに津波の脱退が決まって、そのタイミングですでに去年の5月くらいまでライヴの予定が入ってたんで、そこまでいっしょにやったんですけど……もうバンドは続けられないかなと思ってましたね、最初は。春ぐらいまではアルバムの制作もストップしちゃったし。バンドをどうしていくのかが決まらない以上、制作には向かえなかったので。各々曲は作っていたんですけど、改めてバンドとして進みはじめたのは6月ぐらいです。制作の第2部みたいな感じで、さっき言った5曲以外の曲を作りはじめました」
――そこでモチヴェーションの切り替えがあった?
「開き直るしかないという気持ちもありましたね。いちばん初めに“アンドロメダ”が出来た時、〈宇宙〉という明確なテーマはあったんですよ。そのテーマの続きをやろうという方向性はありました。その時3人で何がこのバンドにとっていいのか?、何ができるのか?ということをすごく話し合ったんですけど、結局、世界観を見せること、聴かせることが自分たちのやりたいことだし、できることだと思って、そこに集中しましたね」
――そこから鈴木さんを加えて制作を再開して……。
「だから、ファーストやセカンドを作ってる時に戻ったような感覚はありました。それと、この前にメジャーでアルバムを2枚出してみて、その時はもちろん満足のいくものを出したんですけど、後から考えると勝手に背負ってたのかな?みたいな感じもあったので」
――何を背負っていた?
「〈メジャーだ!〉みたいなものを。〈メジャーでリリースする作品〉というのを勝手にイメージして、幅を狭めてたところがあったというか」
――それは例えばシングルでよりポップなアプローチを試みたとか、そういうところですかね。
「そうですね。レコード会社の人が〈ポップに作ってくれ〉とか〈もうちょっと歌詞をわかりやすく〉とか、そういうことは言わなかったんですよ。でもそれを、〈言わないということは、自分でそうやっていくのかな?〉みたいな、間違った考えがあったみたいで」
――要するに、考えすぎたと。
「考えすぎた(笑)。30過ぎてから不慣れな場所に来て、〈ちょっとは賢くならないとダメなのかな〉みたいな。メンバーみんなそう思ってましたね。いま思うと浅い考えですけど(笑)」
――うーん、でもわかる気はする。インディーでずっとやりたいことができていたからこそ、メジャーでは変わったほうがいいのかな?と思う気持ちは。
「だからもうちょっと若い時にメジャーで出してれば、もっとエゴイスティックにできたのかもしれない。だけど、そういう考えだったからこそ出来た曲もいっぱいあって、それこそ“君と背景”なんていう曲は、自分で自分をこじ開けないと生まれなかったものだから、それはそれで良かったと思うんですけどね」
――その〈こじ開けた感じ〉は、今回のアルバムにもちゃんと引き継がれてると思うんですよ。サウンドも歌も、閉じる方向にはなっていないし。
「そういうことも含めてメジャーでの経験を踏まえたというか、今回は自分たちのやりたいことがバランスよく出たのかなという気がします。決してマニアックなだけではないし、ポップなだけでもないなあと思うし」
――その象徴になるような曲が、冒頭の“euphoria”じゃないですか。これは山内(憲介、ギター)くんが全部作った曲だと聞いたんですけども。
「そうなんです。今回は山内が全部メロディーを付けた曲もあります。やっぱり楽曲におけるマンネリ感みたいなものは感じていたし、メンバーがメンバーに感じるマンネリももちろんあるわけですよ。それをあまり言わないのが良しとされるバンドだったんですけどね、sleepy.abは。でも、言わないけど、察しろと」
――難しいバンドですねぇ(笑)。
「結局、言わないと変わらないんですけどね。でもそれは言わないまま、何となく各々が少しずつ変わってきてはいたんですよ。そこで山内に関しては、俺が付けるメロディにー対して〈もうちょっとこうしたほうがいいんじゃないか?〉というのがすごくあったと思うんですよ。けど口では言わなくて……今回も口では言ってくれなかったんですけど、初めからメロディーがバン!とあったから。口で言いたくないから形で見せるしかないという感じだったんですかね、自分もそういうことだったんだなと思ったし」
――ああ、なるほど。
「俺は俺で山内に対して〈最近おもしろくないよ〉ってはっきり言ったし。ライヴで、昔は〈こいつ、ほんとイカれてるな〉みたいなところがおもしろかったんですよ。それがちょっとまとまってきてるなと思ったから。機材もそうで、便利な機材が増えたこともあって、なんかおもしろくないなということをすごく感じてきていたんです。最近の山内はプロデュースのウェイトが重くなって、鍵盤の要素も増えていって、ギターというよりはそっちで(音を)補うようになっていったんですよ。それでサウンド自体も優しくなっていったところがあったので、尖った山内をもう一度思い出してほしいという思いがあったんですね。ライヴの見え方も含めて。そういうやりとりがありました」
――それはちゃんと言葉で伝えたんですか。
「言いました。俺は言えるんですよ、山内に対してだけは(笑)」
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