インタビュー

ねごと 『5』



ねごと



[ interview ]

大きく化けた。4人組ガールズ・ロック・バンド、ねごとから、まさに躍進のセカンド・アルバムが到着した。新作『5』は、ダイナミックなエネルギーと、キラキラしたメロディーと、何よりバンドで音を鳴らすことのピュアな楽しさに満ちたアルバムだ。

昨年11月から連続リリースしてきたシングル3部作など、計5枚のシングル曲を含む全13曲(完全生産限定盤は全16曲)を収録した本作。どの曲も、多彩なアレンジと蒼山幸子(ヴォーカル/キーボード)のエモーショナルな歌声が耳を惹く。

この新作の躍動感は、前作『ex Negoto』以降、バンドとして順調に成長を果たしてきた成果……かと思いきや、実は違う。ここ1年半のねごとは、壁にぶつかり、悩み、葛藤を繰り返すなかで前に進んできたのだという。いったい、何があったのか? 蒼山と沙田瑞紀(ギター)の2人に訊いた。



聴いてくれている人の存在



――『5』は、音楽的にも、バンドのアティテュードとしても、〈前に出る強さ〉のようなものがすごく出てきているアルバムだと思います。なので、ファースト・アルバムの『ex Negoto』を出してから、どうバンドが変わってきたのかをまず訊いていきたいと思うんですけれども。どうでしょう?

蒼山「『ex Negoto』の時は、聴いてくれてる人がいることはわかっていつつも、そこに届けることより、やっぱり4人で曲を作るのが好きだし、そこに夢を見てる自分たちがいたなと思っていて」

――前作を作ってる頃は、音を鳴らしてそれを合わせるのが楽しいという気持ちが第一にあった。

沙田「そうですね。4人が楽しければ、それが音になってみんなが楽しんでくれればそれでいいみたいなところがあって。まあ、それはもちろん、いまでも根底にあって変わらないんですけど。でも、この1年半ぐらいでバンドの意識みたいなのが変わったなって、すごく思っていて」

蒼山「あのアルバムはいろんな人に聴いていただけたし、そのことによって初めてフェスにも出て、いろんなことを経験した年になったんですけど。『ex Negoto』の時と変わったのは、聴いてくれてる人の存在がすごく大きかったんだなっていうことを知ったということで。それを知った1年半があったからこそ、この『5』が出来たというか」

――なにかきっかけになったことはあったんですか?

沙田「ライヴに対しての浮き沈みというか……。一生懸命ライヴに向かって、いろんなチャレンジをしているんだけど、もっと楽しめるはずなのになぜか楽しめない自分たちがいて。そういう時期が、実は『ex Negoto』を出した後ぐらいにあって」

――ということは、2011年の後半ぐらい?

蒼山「そうですね。『ex Negoto』のツアーが終わったあと、秋の学園祭ツアーがあって。その時に自分たちを全然知らない人の前でライヴをして。UNCHAINさんだったりBIGMAMAさんだったり、対バンをした他のバンドはフロアを沸かせるのが上手くて。いま考えると、それまでにそのバンドが積み上げてきたことがあってこその盛り上がりだったと思うんですけど、その時の自分たちはそれを観て〈自分たちの音楽でほんとにフロアの人を魅了できてるのかな?〉〈まだまだなんじゃないかな〉って思っちゃって。そこから自信がなくなってしまってライヴが上手くいかない時期が続いたんです」

――まさに、音を鳴らす楽しさだけで完結していたバンドが、他者に出会った初めての経験だったわけですね。

沙田「そうですね、うん」

――で、自分たちにはどういう部分が足りないのかと考えたり?

沙田「話し合いましたね。まずは前に出てみようとか、〈いっしょに手拍子してみてください〉って煽ってみようとか、そういうチャレンジをどんどんして。でも、なぜか〈うーん……そんなに沸かない……〉みたいなところがあって。で、そうやって煽ったり前に出たりすることに対して、まだこっちに恥ずかしさもあったりして。でも、考えたらステージに立ってる人が恥ずかしがってるのって、それこそめっちゃ恥ずかしいことだし、それを見せてるのって良くなかったなって」

――まあ、もともとそういう性格じゃなかったんですよね。

沙田「うん(笑)」

蒼山「でもやっぱり、ただ楽しいっていうところだけが自分たちの目標じゃないんだなって気付いて、だから満足いかなかったんだと思うんです。いま考えると、前に出ることにも、一つ一つに自信がなかったというか。4人でいることの自信というより、それぞれでがんばっちゃってて」

沙田「4人でまず音を合わせて、そこから直球を投げていこう、みたいな部分がその時はまだ見えていなくて。ほんとは4人で不安とかも共有して解消していけば、もっと堂々とステージに立てたのになって。そういう失敗を重ねて、ようやく気付くことができたんです」

――なるほど。バンドが一体感を持つっていうのが解決に向けてのポイントだった。

沙田「うん、そうだと思いますね」


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掲載: 2013年02月06日 18:01

更新: 2013年02月06日 18:01

インタヴュー・文/柴 那典