インタビュー

LONG REVIEW——FOUR GET ME A NOTS 『BLINKS』



グッド・メロディーの秘訣



FOUR GET ME A NOTS

今年はじめにNHK Eテレで放送された〈亀田音楽専門学校〉で、亀田誠治と平井堅が〈泣ける歌 メラメラのメロディ学〉と題して、〈いいメロディーとは何か?〉というテーマの話を語っていた。

そこで取り上げられていた手法が〈リフレイン〉。たとえば、小田和正“ラブストーリーは突然に”の〈あの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったら〉や、サザンオールスターズ“真夏の果実”の〈四六時中も好きと言って  夢の中へ連れて行って〉という箇所は、実は同じ動き方のメロディーが巧みに繰り返されていて、それが〈リフレイン〉なのだという。そういう繰り返しのメロディーが歌われることで、情念がありありと伝わるのだという。まるで堰き止めていた感情が溢れ出すような効果が、それによって生まれるのだという。〈人に気持ちを伝えるには繰り返し何度も言うでしょう?〉なんて説明もしていた。

FOUR GET ME A NOTSの新作『BLINKS』を聴いて思い出したのは、その話。実はこのアルバムの楽曲でも、リフレインの手法がところどころで駆使されている。たとえば、オープニングを飾る1分少しの疾走感たっぷりな“Walk together”。たとえば、アルバム中でもっともエモーショナルなリード曲“Left behind”。たとえば、終盤の大らかで包容力ある曲調の“Lifework”。いろんな曲のサビの箇所で、同じ動きの繰り返しを活かしたメロディーが歌われている。石坪と高橋の掛け合いも効果的にそれに作用していて、このアルバムのポップさ、メロディーの良さは、そんなところに由来しているのだ。

もちろん、サウンドのスタイルは王道のメロディック・パンク。疾走感ある3ピースのバンド・サウンドも、相当に骨太。ライヴハウスのシーンで活躍する彼らが小田和正やサザンオールスターズに影響を受けたということは、きっとないのではないかと思う。亀田誠治に師事したはずでもないだろうし、たぶん音楽理論を勉強したわけでもないだろう。きっと〈どんなメロディーがグッとくるのか?〉を自分の肌感覚で追求していくうちに、自然と自分たちの〈FOUR GET ME A NOTS節〉みたいなものを会得して、確立していったんだと思う。

〈堰き止めていた感情があふれ出すような――〉というのは、まさにメロディック・パンクのバンドに求められる衝動そのものだ。だからこそ、FOUR GET ME A NOTSはシーンのなかで頭角を現したのだと思う。本作は、そういう彼らの魅力が最大限に突き詰められた一枚だ。


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掲載: 2013年03月06日 18:01

更新: 2013年03月06日 18:01

文/柴 那典