LONG REVIEW――レイト 『君を愛す』
未来への大きな希望
2008年のファースト・アルバム『明日など来るな』で家庭崩壊やいじめといったテーマに直截的な言葉でズブリと斬り込み、汚れに満ちた社会の残酷さを暴いて見せた彼だが、今回、その冷徹な視線はまず自分自身へと向けられている。このたびの新作『君を愛す』の冒頭を飾るナンバー“それを愛す”が指す〈それ〉とは、劣等感に押し潰されそうになりながら、鬱屈した感情を胸に生きてきた自分自身のことであり、そんな自己をそのまま受け入れようとするところから物語は始まるのだ。
だが、彼にとって世の中とは理解し難い不条理に溢れたものであり、そのままの自分であることを肯定して生きるということは、言うなればクソッタレの社会に疑問を抱きながらも、折り合いをつけて生きていくということである。苦悩から目を背けることなく、自分自身に正直であることを願う“少年R”、みずからを鼓舞するように〈歌おう/歌おう/不安な時こそ〉とリフレインする“夜行線”など、そのラップには世界に対して心を開こうともがく彼の切実な思いが込められている。
そういった結び付きを欲求する複雑な感情は、曲が進むにつれてよりストレートなものとなり、“連鎖”では〈壊れかけてる君〉を救い守ることを強く望み、“荊棘の園”では4つ打ち調のエモーショナルなトラックに乗せて幻想的な愛の歌を紡ぐなど、以前の猜疑心に満ちた彼では考えられないような表情を見せる。そしてついに結びの1曲“君を愛す”で〈死にたい〉と願う〈君〉に対して勇気付ける言葉を送り、ただひたすらに生きることを促すのだ。この〈君〉が指すのは、リスナーなのか、物語のなかの誰かなのか、はたまたレイト自身のことなのかはわからないが、彼が未来への大きな希望を手にしたことは間違いないだろう。
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