インタビュー

UNCHAIN 『Orange』



UNCHAIN



[ interview ]

グルーヴィーなサウンドと、エモーショナルで人懐っこいメロディー。そして、スウィートにもビターにもなる谷川正憲の情感豊かなヴォーカル──そんなチャームを撒き散らしながら駆け抜けてきた4人組、UNCHAINが、J-Popのヒット・チューンをカヴァーしたアルバム『Love & Groove Delivery』を経て、1年2か月ぶりとなる通算6枚目のオリジナル・フル・アルバム『Orange』を届けてくれた。AOR、フュージョン、ディスコ、USインディー・ロックなど、さまざまなサウンドと無邪気に戯れながら、どこか夏めいた爽快さやドライヴ・ミュージックのような軽やかさも匂わす本作は、UNCHAINというバンドの可能性をより自由に広げた野心作。さっそく、ヴォーカル/ギターの谷川と、ベースの谷浩彰に制作の経緯を訊いてみることにしよう。



異なって世界観の共存



──まず、全体を通してとても雰囲気のあるアルバムだなあという印象を受けました。夏っぽくもあり、ドライヴ・ミュージック的な爽快さもあり。

「仕上がって改めて通して聴いてみると、夏に合うなって、確かに思いますね。ドライヴしながら聴けるような軽快な感じのアルバムになったと思うし……そこは、多少は狙ってましたけど」

──プロデューサーの名村武さんとは、制作前にどういう話をされてたんですか?

谷川「前作の『Eat The Moon』は〈夜のテーマパーク〉っていうコンセプチュアルなものがあったんですけど、今回はそういうのもなくてですね……あえて設けなかったというか。今回は、素直に出てきたものを大切にしたというか、そのほうが良いんじゃないかっていうことを話し合いながら作りましたね」

「サウンド面はいつもよりライヴを意識したというか、そういうアレンジになりましたし、そこは名村さんともメンバーとも相談しながら、ギリギリまで作業してました」

谷川「ライヴを意識したと言っても、ライヴ感を意識して作ったというよりは、ライヴで映える曲を……っていう。最近はレコーディングとライヴが別モノにならざるを得ないというか、演奏はヘタでもレコーディングはなんとかなっちゃうぐらい進歩してるんで、音にこだわって良い音を録ろうとすると、おのずとライヴから離れていってしまうんですよね。それに、どれだけライヴの空気感に近付けたとしても、ライヴには勝てないですから。それはしょうがないというか、だったら分けて考えようって。でも、曲的には『Eat The Moon』以上にライヴで盛り上がれそうなものがいっぱい入ってるんじゃないかな」

「でもまあ、当初の予定より1か月ちょっと押してしまって、ホントもう、スタッフにはわがまま聞いてもらいました(笑)。現場の緊張感も高かったし、その間を取り持ってバランスを取ってくれたのはプロデューサーの名村さんであり、ディレクターの伏島(和雄)さんであり。今回はチームで作った感がすごくありますね」

谷川「結成して17年とかになるんですけど、いまだに喧嘩というか、100%意見を揃えるのは難しいなって思うんですよ。別の世界観を持った者同士が妥協なく交われるっていうのがバンドの醍醐味だと思うんですけど、そのへんのバランスをとってくれたのは名村さんや伏島さんだったし、〈異なった世界観の共存〉っていう、今回僕らがめざしていたところに結果的に辿り着けたかなって。アルバムのジャケットにも実はそういう意味を持たせてるんですよね。オレンジの皮をめくるともうひとつの世界があるっていう。僕と佐藤(将文、ギター/コーラス)がいっしょに作った詞も曲もあるし、佐藤と谷くんが歌った曲があるっていうのも共存だと思うし……そういうものがいっぱい集まったアルバムだなって思いますね」


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掲載: 2013年06月05日 18:00

更新: 2013年06月05日 18:00

インタヴュー・文/久保田泰平