INTERVIEW(3)――ツアーを終えたところでアルバムが完成する
ツアーを終えたところでアルバムが完成する
──“迷宮パスワード”は、歌謡ロックとでも言いましょうか、エモーショナルでアクの強いギター・ソロもそういう印象を後押ししてるのかもしれませんが。
谷川「昔作った曲で“Show Me Your Height”(2008年作『rapture』収録)っていう曲もそうなんですけど、僕個人のイメージとしてちょっと戦隊モノのテーマ曲っぽいというか、そういうアレンジをめざして作ったわけでもないのに、たまにそうなっちゃうことがあって。でも、それが結構、僕の周りだったりファンの間では〈UNCHAINっぽいもの〉として捉えてもらっているというか。あと、この曲にはクロスオーヴァー感みたいなものも出てるかな。ド頭の変拍子とか。初期の頃によくやってたパターンなんですけど、そういうものをこの曲ではさらっと出してみた感じですね」
──“King of Comedy”は、佐藤さんの詞曲で、リード・ヴォーカルも佐藤さん。ズバリ、ディスコですね。
谷川「今回、佐藤もいっぱい曲を作ってきたんですけど、僕はこの曲がいちばん好きですね。曲調とかメロディーに佐藤っぽいものがいっぱい詰まってる。で、これはもう佐藤が歌っちゃったほうがいいんじゃない?ってノリで言ったらそうなっちゃったみたいな」
谷「ベースのフレーズは録る直前ぐらいに完成したんですけど、それもなんか80sっぽいというか、曲を聴いてそういうインスピレーションが浮かんで。佐藤が持ってきた世界観に上手いこと溶け込めたなって」
谷川「ミックス・エンジニアの鶴崎(康宏)さんも、何も言わずにそれらしき音に仕上げてくれましたからね」
──“Time Machine Blues”は谷さんの詞曲で、ラップ調のパートも含めたリード・ヴォーカルを。
谷「ラップは、ライヴの要所でお客さんを煽るとか、そういう意味合いも含めてやりはじめたのがきっかけなんですけど、自分的にもラップというものにもうちょっと触れたいなって思って。ベースを弾きながらやる人もあまりいないだろうし、おもしろいかなって。あとはまあ、初めての挑戦でもあったし、ワクワクした感じも出したかったので、95年にタイムスリップした歌詞になっていて」
──95年というとバンドを結成しようかっていうぐらいの時期ですかね?
谷「まあ、そのへんの時期なんですけど、その頃の気分に思いを馳せつつ、未来を見越した感じの歌詞に。小学校とか中学校の頃に、自分が30歳ぐらいになったら何してるんだろうなあ?ってふと想像する時ってあったと思うんですけど、そういうワクワクした感じを出したかったんです」
──次の“Hossana”は、聴いてると清々しい気分になります。雨上がりの晴れ間を見るような。
谷川「タイトルは〈Hosanna〉っていう神を賛美する言葉をもじったもので、まあ、〈Hallelujah〉に近いような意味ですね。僕、ゴスペルが大好きで、たまにライヴを観に行ったりするんですけど、現代のゴスペルってすごくいろんな音楽を採り込んでるんですよね。それこそヒップホップやR&B、ハード・ロックとかも。そのゴッタ煮感もすごく好きだし、歌のパワーにも圧倒されるし」
──〈母〉というのがテーマになっている歌詞ですね。
谷川「ジャケットに地球が描かれてるように、〈母なるもの〉っていう大きな意味から自分のオカンまで、命を作ってくれたものへの賛美を込めたものですね。合唱できるパートもあるので、ライヴではぜひみんなで歌いましょう!」
──ラストは“ウインド・ギア”という曲。谷さんが作詞で谷川さんが作曲。歌詞もサウンドも、アーバンな雰囲気を湛えた曲ですね。
谷川「そうですねえ、アーバンかどうかわかんないですけど、実際に歌ってみるまではあまりイメージできなかったんですよね、この歌詞とこの曲っていうのが。それはもともと僕の書いた詞もあったからなんですけど、谷くんの歌詞が上がってきて、歌ってみたらすごくしっくりきたんですよ。僕が歌詞を書いてたら絶対この感じにはならなかったなって。2人の世界観が折衷できた曲です」
──曲を聴いて勝手にイメージさせていただいたのは原田真二の“雨のハイウェイ”という曲で……。
谷「あっ、実は〈ハイウェイ〉という言葉をどこかに入れようと持ってたんですけど、名村さんから却下されました(笑)。〈普通、ハイウェイって言う? 高速だよね?〉って。確かに(笑)。
谷川「もう、〈ハイウェイ〉連発してたんで(笑)」
谷「連発はしてなかったでしょ(笑)。でもまあ、いろいろ遊んでました、言葉で」
──谷さんはずいぶんロマンティックな歌詞を書きますよね。〈陽炎のダンサー〉とかなかなか出て来ないフレーズだと思います。
谷「まあ、こう見えてもですね(笑)。もともと谷川くんの書いてた歌詞の世界観も汲み取って、それで恋の歌にしようかな、あっ、ドライヴの歌でもいいなって。最終的には出口の見えない恋、ネガティヴなようでもあり、その先は聴き手に委ねますよっていう歌になりました」
谷川「いまの時代感だったり、いまの僕らを表している歌詞とも言えますね。先の見えない不安感もあるんだけど進んで行くしかないしっていう」
──さて、ライヴで映える曲をということで編まれた楽曲たちですけど、ライヴで再現するのが大変そうな曲も多いですね。
谷川「そうですね。リリースしたあとに〈Orange Road〉というツアーがあるんですけど、そこではこの曲たちを再構築するぐらいのつもりでライヴ・アレンジしますし、それによって〈こう変えてきたか!〉っていうところも聴いてほしいし、ここはちゃんと再現されてるんだなっていうところも聴いてほしい。結構生まれ変わってると思うんで、そのへんも楽しみにしてほしいですね」
谷「うん、アルバムの真価が問われるのはライヴだと思ってるので、ガッチリ」
谷川「いつもツアーを終えたところでアルバムが完成したなっていう感じがあるので、ツアーが終わるまでがアルバムの制作。そういう感じで今回のツアーも臨んでいきたいと思います」