LONG REVIEW――UNCHAIN 『Orange』
80~90年代のあの名盤に比肩するソウル・ポップ盤
ソウル・ミュージックを吸収したミクスチャー・サウンドを鳴らしてきたUNCHAINがとりわけ大きな変化を見せたのは、前々作にあたる2011年の『SUNDOGS』だった。彼らはこのアルバムから全編を日本語詞で構成するようになり、サウンドの面でもそれまで以上の貪欲さでもって、実にさまざまな要素を採り込みはじめたのだ。オリジナル作としては約1年ぶりとなる今回のニュー・アルバムは、そんな『SUNDOGS』以降のチャレンジをスマートに結実させた、完成度の高い一枚と言えるだろう。楽曲ごとに異なったカラーがありつつ、いずれも洗練と親しみやすさを兼ね備えた日本語ポップスに仕立てられており、全編を通してブレがない。80年代の山下達郎や、90年代のオリジナル・ラブの諸作に比肩する……と表現しても決して大げさではない快作だ。
カントリー・タッチの“ジーン・ラプソディ”やトロピカルなリズムが跳ねる“Cuckkooland”、ディスコの煌めきを投射した“King of Comedy”といったヴァラエティー豊かなサウンドが居並ぶなか、アルバムにひとつのムードを与えているのが“Makin' Pleasure Cake”“Hossana”などのソウル~AOR寄りの楽曲群だ。特に“Smile Again”がすこぶるキャッチーなシティー・ポップに仕上がっていて素晴らしい。夏にぴったりのこの曲は、ことに多くの人々の胸を射抜くことだろう。
木下航志(キーボード)や田村玄一(ペダル・スティール)といったゲスト・ミュージシャンを適所で迎えてはいるのだが、ベースになっているのはあくまでメンバーが紡ぐバンド・アンサンブル。ギター・カッティングが小気味良いリズムを作り出し、コーラスが豊かな色彩を付与し、谷川正憲の艶やかなヴォーカルが楽曲の真芯を貫く――そんな、ある意味でシンプルな構造ですべての楽曲が成り立っていることが、本作に強靭な統一感を与えているのだろう。