INTERVIEW(4)――雨の日に聴いてもらえればお近付きになれる気がする
雨の日に聴いてもらえればお近付きになれる気がする
――アルバムの最後の曲“Wild Nights”は、アメリカの詩人、エミリー・ディキンソンの詩に畠山さんが曲を付けられていますが、以前から好きな詩人だとか。
「そうなんです。前作もエミリーの詩を使ったので、今回は別の詩人にしようと思って(ウォルト・)ホイットマンとかエドガー・アラン・ポーとか、いろいろあたってみたんですけど、歌に向いているものがなかなか見つからなくて。で、エミリーの詩を見たら見つかったんです。エミリーの詩って、曲を付けやすいんですよね。自然とメロディーが浮かんでくる。この曲も2分くらいで出来ました」
――“Wild Nights”は嵐の夜の歌ですが、冒頭曲“風の栞”は嵐が過ぎ去った朝の歌ということで、ラストからオープニングへと繋がっていく流れがありますね。
「そうなんですよ! 気付いていただけるとすごく嬉しいです。最初から考えていたわけじゃないんですけど、曲を並べてみたら偶然にも繋がっていることがわかって、個人的には大満足なんです」
――出来上がったアルバムを通して聴かれた感想はいかがですか?
「好きで毎日聴いていますね。なんだか自画自賛っぽいですけど(笑)。今回は求めていた質感を上手く捉えることができた気がします。音の質感、ちょっとした発声とか発音とか、そういう細かいニュアンスを捉えることができました」
――その質感とは、どういうものだったのでしょうか。
「中島さんのピアノですね。クリスタルのようで、静謐で。ああいう質感が歌モノになったらどうなるのかな?って」
――中島さんのピアノからインスパイアされたところがあったんですね。
「そうですね。自分の声と融合したらどうなるんだろう?とか。それでエンジニアは中島さんのピアノを録っている方にお願いしたんです。マスタリングはジョン・デイヴィスっていうU2とかシャーデーを手掛けている方にお願いしたんですけど、その方から電話をいただいて、〈素晴らしいアルバムだったので次回作もぜひやりたい〉と言っていただいて、すごい嬉しかったですね」
――ミックスやマスタリングにも、こだわりがあったんですか?
「音を綺麗にしたり、トータルに整えるのではなくて、ざわめきを残したままマスタリングしてほしい、というのはリクエストしましたね」
――その〈ざわめき〉が雨の日の質感に繋がったのかもしれないですね。
「うん、そんな気がします」
――ちなみに雨の日にはもう聴かれました?
「聴きました。雨の日に聴くほうが、いろんな思い出が鮮烈に蘇りますね」
――僕は残念ながら、音をいただいてから雨の日がなくて。
「そうなんですか。雨の日に聴いてもらえれば、聴いてくださった方とお近付きになれる気がするんです。なので、ぜひ次の雨の日には!」