インタビュー

INTERVIEW(2)――リズムがより多彩に



リズムがより多彩に



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――オーディエンスとの信頼関係こそが、バンドの命綱ですからね。今回のアルバムに関しては、どんな方向性を考えていたんですか?

KAT$UO「うーん……。今回、そういうのはなかったかな」

MASAYA「そうだね。前作からの流れを引き継いで、制作に入って」

KAT$UO「とにかく時間がないなか――HIROMITSU(ベース)とMASAYAはツアー中のホテルで曲を書いたりしてたし――みんなでスタジオに入ったのも10回もないくらいだったんですよ」

TOMO「1回もバンドで合わせないままレコーディングした曲もありましたし」

KAT$UO「だから、ちゃんとしたコンセプトを決めることもなかったんです。出来上がってみると、前作とは違う雰囲気のアルバムになったとは思いますけどね。毎回感じるんですけど、何をやっても最後はTHE CHERRY COKE$らしい曲になるんですよ。目新しいテイストであっても、〈これが自分たちのニュー・スタンダードなんだな〉って思えるというか」

MASAYA「うん。たとえばボサノヴァやラテンの要素を採り入れたとしても、THE CHERRY COKE$の音楽になることがわかってきたし。今回も基本的にはやりたいことを持ち寄ったら、こういうアルバムになったっていう」

KAT$UO「今回、こういうインタヴューで〈より多くのリスナーに向けたアルバムになりましたね〉って言われたんだけど、それも意識していたわけではなくて。あとは聴いてくれる人がどう捉えるか?っていうことですよね……どうでした?」

――音楽的な自由度がさらに上がってる印象を受けました。根本にあるのはアイリッシュ・パンクなんだけど、ヘヴィー・ロック、ラテンからキャッチーなポップスとも言える曲もあって。

MASAYA「最低限のこだわりはあるんだけど、それさえ踏まえれば……というなんとなくの暗黙の了解があるんですよね」

――〈最低限のこだわり〉というと……?

MASAYA「アコーディオン、ティン・ホイッスルなどのアコースティック楽器をしっかり鳴らしてフォーク〜パンク・ロックであるということですね。生楽器を演奏するメンバーがいるんだから、それはちゃんと活かさないと。ジャンル的な縛りはまったくないんです。この7人で音楽的に中身のあることをやり切れば、それがポップスだろうが何であろうが、曲が良ければいいっていう」

KAT$UO「いつも新しいことをやっていたいし、いい意味の裏切りというか、〈お客さんを驚かせたい〉っていう気持ちもありますからね。そもそも〈俺たちはアイリッシュ・パンクをやってます〉って自分たちで言ったことはないんですよ」

MASAYA「そうだね」

KAT$UO「もっと広義の捉え方をしていて、そのなかのひとつのエッセンスとしてケルト音楽があるっていう。最初の音源でもレゲエの曲のカヴァーをやってたし、ファースト・アルバム(2004年作『Beer My Friends』)のときもカントリーやロカビリーを採り入れた曲があって。いろんな音楽からの影響があるし、今回のアルバムに関しても、これを聴いて〈やっぱりチェリコはアイリッシュ・パンクだな〉って言う人は恐らく少ないと思うんですよね」

――確かに。

KAT$UO「このアルバムはもっとフラットな感じで聴いてもらえるんじゃないかなって。今回は16ビートの曲が多いし、自分たちにとっても新しい道が見えてきてると思うんですよね」

MASAYA「リーダーのHIRO君(HIROMITSU)が〈2ビートに頼るのはやめよう〉って言ったんですよね。2ビートの曲でお客さんが盛り上がるのはわかってるけど、同じことを続けてもしょうがないって。確かにコンセプトはないんだけど、2ビートに頼らず、いろんなビートやグルーヴを1枚のアルバムのなかに閉じ込めるというテーマはあったかも」

KAT$UO「いくら好きなバンドでも、同じことばっかり続けられるとテンションが落ちたりしますからね」

――リズムが多彩になれば、演奏、アレンジに関してもかなり変化が生まれますよね?

TOMO「そうですね。けっこう大変でした(笑)。このバンドはウワモノが多いから、各々が思ったままにやると、必ず音がぶつかっちゃうんですよ」

KAT$UO「楽器の数が多いから、全員が好きなようになると怒涛の如くいろんな音が出てくるし、ゴチャゴチャしちゃう(笑)。今回はかなり〈引き算のアレンジ〉ができてると思うんですよね。〈ここは(楽器の音を)減らそう〉みたいなこともしっかり考えて。あとはBPMですよね。スタジオでやってるとテンションが上がって〈もっとテンポを上げよう〉みたいになりがちなんですよ。そうじゃなくて、〈ヘッドフォンで聴いたときはこのテンポが心地良かったんだから、このままでいこう〉って抑えてみたり。勢いまかせだけではない作り方ができたんじゃないかな」

MASAYA「勢いでやってるとどうしても一過性のものになるし、残っていかないですからね」

KAT$UO「歌に関しても〈良い歌を歌いたい〉って思うようになったんですよね。それは歌詞が優しいとか温かいということではなくて、たとえ攻撃的だったりネガティヴだったりしても、ちゃんと〈良い歌〉を歌いたいなっていうことなんだけど」

MASAYA「うん。歌詞のすり合わせもかなりやりましたからね、今回。書いてきた歌詞を読んで〈ここまで熱い感じじゃないんだけどな〉って言ったり。もちろん、作詞者のファースト・インプレッションも大事なんだけど、作曲者のイメージと大きく違うのはやっぱり良くないし、そこはしっかり話して」

KAT$UO「良い曲にしたいという気持ちはみんな同じだし、妥協することなく、ちゃんと納得したいですからね。さっきも言ったように、時間がなくて大変だったんですけどね。せっかく書いた歌詞に対して〈ちょっと違うんだよね〉って言われると、その瞬間は〈マジか?〉って思うんだけど(笑)。かなり疲れたけど、アルバムが出来て良かったですよ。こうやってインタヴューで話せてるのがホントに嬉しい(笑)」


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掲載: 2013年06月12日 18:01

更新: 2013年06月12日 18:01

インタヴュー・文/森 朋之