インタビュー

LONG REVIEW――一十三十一 『Surfbank Social Club』



夏の淡い恋を彩るシーサイドのスムース・サウンド



一十三十一_J



明け方までクラブで踊ってヘトヘト、でもまだ帰りたくなくてファミレスでブレックファストして。もうとっくに話すことなんかないのに、なぜだか別れ難い朝。なんか、どっか行きたいね。海見たいなー――そんな調子で誰かの車に飛び乗って、辿り着いた海辺。ヨット・ハーバーの端っこあたりにひっそりと立つ看板には、〈Surfbank Social Club〉の文字。早耳のミュージック・ラヴァーたちが集うという、秘密のクラブだ。オーナーは〈ミス・シティー・ポップ〉こと、一十三十一。取り巻きの男の子たちも、クニモンド瀧口(流線形)やDORIAN、Kashifといったお馴染みのメンツから、LUVRAW & BTBにgrooveman Spot、Avec Avecといったニューフェイスまで、とびきりイカしてる子ばかりが揃ってるみたい。漏れ聴こえるベースラインに吸い寄せられてクラブの扉を開いてみると、そこには煌めく夏の海とナイス&スムースなサウンド、それに淡い恋が溢れていて……。

と、思わず脳内でベタな物語を展開したくなるほど、最高にブリージンなサマー・アルバム『Surfbank Social Club』を完成させた一十三十一。思えば前作『CITY DIVE』は都会の夜の喧噪や憂いを描き、街に焦点を定めたシティー・ポップの傑作だったけれど、今回はその舞台をシーサイドに移行。〈湘南辺りまで/向かうのよマリーナ/オーシャン/降りしきる雨の湾岸で〉という、リゾート感溢れる歌詞が冒頭から冴え渡る“LAST FRIDAY NIGHT SUMMER RAIN”を皮切りに、LUVRAWのロボ声が効いたビーチ映えしそうな煌めき系ダンス・チューン“STARDUST TONIGHT”、宵闇時のセンシュアルなムードを描いたミディアム“BEFORE VELVET HOUR”、Kashifによるドゥワップ調のコーラスと主役の切なげな歌唱とのハーモニーが美しいバラード“ENDLESS SUMMER HOLIDAY”まで、多彩な全12編のシーサイド・ラヴ・ストーリーが勢揃いしている。全編に渡り、イナたいまでにキラキラと輝くメロディアスなシンセの音色と、軽めのビートが混ざり合った80sマナーな音像を活かしつつ、随所に現在のモードを反映させた彼女のセンスが光る仕上がりには惚れ惚れ。

願わくば、真夏の夜のクルマの中で、もしくは太陽ギラギラの砂浜の上……いやいや、うんと現実的にクーラーの効いた部屋だっていい。このアルバムをヴォリューム上げて聴いてみたらいい。クールなんだけどメロウ、甘くて、ちょっと切なくもあるこれらの曲が鳴ってる場所こそが、〈Surfbank Social Club〉なのだから。



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掲載: 2013年06月19日 18:00

更新: 2013年06月19日 18:00

文/aokinoko