インタビュー

一十三十一 『Surfbank Social Club』



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[ interview ]

実に5年ぶりのオリジナル・アルバムとなった前作『CITY DIVE』で、2012年の夏をアーバンに彩った一十三十一。昨今のポップス・シーンにおいてトレンド・ワードになっていると言ってもいい、80年代の〈シティー・ポップ〉を踏襲したサウンドを聴かせた同作は、知識や情報収集の積み重ね、それだけでは成り立たないオリジナリティーやムードを放ち、最新型のポップスとしてこれまで以上に多くのリスナーから熱く迎えられた。

あれから1年。ここで紹介するニュー・アルバム『Surfbank Social Club』は、ジャケットやブックレット、MVといったヴィジュアルも含めて、『CITY DIVE』で聴かせたニュアンスをよりシネマティックに描き出している。その世界観を主にアート・ディレクション、スタイリング面で支えるのは、アパレル・ブランドである〈Yuge〉のデザイナー/アート・ディレクターである弓削匠。今回は一十三十一と弓削の2人に、新作のヴィジョンを語ってもらった。



〈ホイチョイ3部作〉のイメージで作りたかった



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弓削匠&一十三十一



――昨年の『CITY DIVE』が好評でした。

弓削匠「衝撃でしたよ、このアルバムは」

一十三十一「意外と大人気でしたね」

――リリースして数日後にお店から姿を消す、なんてこともありました。

一十三「〈(CDが)ない事件〉ありましたね。ここにもないあそこにもないっていうツイートも見ましたし……ありがたいですね」

──80年代のシティー・ポップを多少なりともリアルで体験して、それを懐かしんで聴けるような世代だけが反応したわけではないっていうことでしょうね。

弓削「そうですね、そう思います」

──ところで、一十三さんの音楽性というのは、これまでさまざまな交友関係によってマイナー・チェンジを繰り返してきたと思うんですが、『CITY DIVE』も今回の『Surfbank Social Club』も、PAN PACIFIC PLAYA(PPP)との交流が大きいですよね。

一十三「PPPの一部とはずいぶん前から仲良くしてたんですけど、私が前の事務所やレーベルを離れてフリーになったところで、いっしょにバンドをやろう、という自然な流れがあったんです。それがJINTANA & EMERALDSというサイケデリック・ドゥワップ・バンドだったんですね。一十三十一としてのオリジナル・アルバムは5年ぐらいリリースしてませんでしたけど、そういったコラボレーション、あとDORIANのアルバムにも参加しましたし、出産~子育ての合間にライヴ活動もわりとしていたんです。それでまあ『CITY DIVE』に行き着くんですけど、PPP周辺と出会ってコラボしていくなかで、私のなかにあったシティー・ポップな要素が呼び覚まされたというか……基本的にデビューしてからずっと私なりの〈アーバン〉は謳っていたつもりなんですけど、改めて〈だよねえ〉みたいに確信して」



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──さらにまた、今回同席いただいてる弓削さんとの出会いが。『CITY DIVE』のジャケットやMVのアート・ディレクションは、一十三さんの音楽性をよりカラフルに引き立てましたよね。

一十三「もともとはクニモンド瀧口さん繋がりで知り合って。『CITY DIVE』を作っているときから、来年の夏もこの進化版を作りたいって思っていたんですけど、そのとき考えていたイメージは映画のサントラ、〈ホイチョイ3部作〉(※)みたいなイメージで作りたいなって。現代版『波の数だけ抱きしめて』みたいなアーバン・リゾート・ラヴ。そしたら弓削さん以外に考えられなくて、それで今回もお願いしますと」
※ホイチョイ3部作:クリエイター・グループ、ホイチョイ・プロダクションズが手掛けた劇場作品で、「私をスキーに連れてって」(87年)、「彼女が水着にきがえたら」(89年)、「波の数だけ抱きしめて」(91年)がそれ。それぞれ、〈スキー〉〈スキューバ・ダイビング〉〈ミニFM局〉がテーマになっており、ファッションの面でもさまざまなトレンドを生み出した大ヒット作品

弓削「『波の数だけ抱きしめて』もそうなんですけど、『私をスキーに連れてって』の世界観がずっと好きで、あのイメージをいつか形にしたいなっていうのは個人的にもあったんですよね。なので『CITY DIVE』が終わって、まあ終わったらそれっきりになりがちだけど、レーベルのディレクターさんとはちょいちょい会って話をしていて……」

──好きなポイントが合致したわけですね。

一十三「アルバムの世界観なんかは、前作よりだいぶ突っ込んだ形で参加していただいて、歌詞のヒントをいただいたりとか、多くは弓削さんと私でイメージを共有しながら作っていきました」

弓削「がんばりましたね、ホントに」



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掲載: 2013年06月19日 18:00

更新: 2013年06月19日 18:00

インタヴュー・文/久保田泰平