LEO今井 『Made From Nothing』
[ interview ]
LEO今井は脳内で鳴っている音楽を、実に丹念な作業で構築しながら、徹底的に高い水準で具現化していくタイプのシンガー・ソングライターだ。いや、シンガー・ソングライターなんて紹介だけではまったく収まらない。コンポーザーであり、サウンド・クリエイターであり、ヴォーカリストであり――とにかく、自分の作業に一切の妥協を許さない男だ。下手でも気持ちがあれば……とか、技術はないけどやる気で勝負……といったエクスキューズを彼は嫌う。だから、LEOの音楽はいつだって隙や未成熟なところがほとんどない。インタビュー中、創作に関してはみずからを〈独裁者〉と例えているが、そういう意味ではむしろ〈完璧主義者〉と言っていいかもしれない。だが、その甘えを許さない姿勢がこの男の魅力だ。
そして新作『Made From Nothing』は、彼のひとつの到達点と言えよう。向井秀徳とのユニット=Kimonosでの作品リリース、ライヴなどの経験を経て辿り着いたこのアルバムには、カントリーやアフリカ音楽、ドラムンベース、果ては九州の民謡などさまざまな要素が何とも大胆に消化されている。時にバンド・サウンドで、時に一人でフィジカルかつダンサブルに仕立てた、完成度の高い肉厚な作品だ。おまけにヴォーカルの破壊力、説得力も過去最高級である。それでは、「制作で出し切りました」と苦笑いして着座したLEO今井へのインタヴューをお届けしよう。
日頃のトレーニングと苦悩が実を結んだのかも
――すごくグローバルなアルバムだなという印象を受けました。さまざまな国やエリアの音楽のエッセンスを混ぜ合わせて、モダンに仕立てたような……。
「ありがとうございます。最初から広いスパンで作ろうとは考えてなかったんですけど、折衷主義……と言うと意味合いが違うかもしれないですが、90年代初頭のアメリカ西海岸のバンド……例えばリンボー・マニアックスとかフェイス・ノー・モアあたりが自分の音楽のルーツにもあるので、さまざまな音楽ジャンルを実験的に組み合わせることはすごくナチュラルでした。ただ、今回は(そうやって取り込む音楽の)要素が結果としてすごく広くなって、頭の中で想像している音をスムーズに出せるようになってきた感じがはしますね」
――それは、Kimonosで培った経験も影響しているように感じるのですが、具体的に向井秀徳くんとの作業でフィードバックされているものはどういうところに出ていると思いますか?
「手法……メソッドですね。Kimonosでアルバムを作った時は自由にやらせてもらったんです。マイペースに楽しく2人でMATSURI STUDIOにこもって作業をやって……。それを今回は一人で再現しようとしたんです。それもなるべくアットホームな環境で。例えば、Kimonosの時はロジックにネタを打ち込んでいってアレンジして、モノによってはそれを別のスタジオに持っていってドラムを差し替えたり、差し替えないものはそのままそこでミックスまでして……って感じで制作していたんですけど、今回もそれに近いプロセスでした。一方で、バンド・サウンドのものが半分くらいあるんですが、そういう曲は別のスタジオでメンバーたちと録音して、それ以外は自分の家でミックスしたり……」
――すごくフレキシブルに作業をしたわけですね。
「そうですね。曲によってバンドと録ったり一人でやったりっていう作業が前よりも遥かにスムーズにできるようになりました。やっぱり日頃のトレーニングと苦悩が実を結んだのかもしれないです(笑)」
――苦悩……(笑)。
「やっぱり頭の中で鳴っている音を形にするのは簡単じゃなくて、トレーニングが必要なんです。バンド・メンバーとライヴを重ねることで、仲間関係、信頼関係を築いていくことにも時間をかけました。Kimonosやそれ以前の活動のなかで蓄積していったことが、今回のアルバムに繋がったんだと思います」