INTERVIEW(3)――自分の作品に対しては独裁者でいい
自分の作品に対しては独裁者でいい
――ローファイ的なユルさ、手作りっぽさとは対極の音であり、パンクのストリート感とはあきらかに違いますね。
「そうです! だから私はニルヴァーナよりその後のデイヴ・グロールの活動のほうが好きなんです(笑)。やっぱり技術って大切だと思うんですよ。それは私自身がテクニックの面で決して優れているわけではないから余計に感じるのかもしれないです。緻密に作ったほうが絶対に良いものができる……というか、自分の感覚に合った、頭の中で鳴っている音を形にするにはそのほうがいいという結論なんですね。試したこともあるんですよ。そういうローファイっていうかハンドメイドな作り方。でも、上手くいかなかったんですよね(笑)。それ以来、緻密でテクニカルな作り方でやるようになりました。ただそのぶん、時間もかかるし手間もかかるし、ノイローゼにもなります(笑)。でも、作品は自分の理想の世界だから、そのくらい突き詰めてもいいと思う。自分の作品に対しては独裁者、ファシストでいいと思うんですよ(笑)」
――それはバンド・メンバーに対しても?
「Yes(笑)!!!」
――メンバーとぶつかることもあるでしょう?
「いや、それでいいんです。そうやっていいものが作れればそれがいちばんだから」
――楽曲自体はそのように構築されたものである一方、すごくフィジカルで開放的な感覚に包まれてもいますね。アフリカの音楽や日本の民謡を採り入れても、リズムの観点からそこにアプローチをしている。だからダンス・ミュージック的な側面さえ感じられるんですよ。生演奏でロック・バンド然とした曲であってもリズミックだと。
「ああ、それはあります。実際、僕はドラム・パートを作っている時がいちばん楽しいですから(笑)」
――どうやってリズムを作っているのですか?
「リズム・マシーンとかキットを使わないで、自分でエアドラムみたいに叩いたものをMIDIで打ち込んで作っていくんです。リズムの根本は野性的なものだから何かをそのまま引用して作ることはないですね。もちろん、〈このアルバムのこのドラムのこのスネアの音色が欲しい〉みたいに考えることはありますけど、リズムそのものをサンプルすることはないですね。いちから創作しています」
――例えば今回のアルバムだと?
「“Omen Man”のスネアは2つ参考にしています。ひとつはパール・ジャムの『No Code』、もう一つはヘルメットの『Betty』。あとドラムンベースを採り入れた6曲目の“Doombox”だと、キックはボーズ・オブ・カナダのファースト(98年作『Music Has The Right To Children』)の、あのモコッとした、タムにエフェクトをかけた感じですね。ドン! と直接的に音を鳴らさずに、霧をかけた感じの音処理。そうやって部分的に参考にしたものは多いです」
――それは相当複雑な作業ですね。
「いやあ、本当はもっとやらないといけないし、アンプも100台並べて、全部コードDで弾きましょう、みたいなこともやってみたいんですよ」
――偏執的な作業だ!
「うーん、やってみたいですね~。本当はそれくらいやらないと納得できないところもあるんですけど……」