インタビュー

INTERVIEW(4)――無から生まれた音楽



無から生まれた音楽



Leo今井_A4


――でも、出来上がった作品は決してインドアな感じじゃないですね。作り込んで作り込んで内向きになってしまった、という作品じゃない。むしろフィジカルになっている。

「はい。たぶん基本的に打ち込み音楽じゃなくて自分の肉声、ヴォーカルと生演奏によって成り立っているからではないですかね。打ち込みのものもあるんですけど、例えば“My Black Genes”はベーシスト・薫國の手弾きのアコギ音をループさせて、有機的な感じにしてある。サンプルとシンセの音色をできる限りおもしろくて新しくてイイ具合に混ぜ合わせようとしてますね。まあ、人間の力で鳴らされている感じが出ているから、作り込んでも閉じているように聴こえないんじゃないかな」

――LEOさんのヴォーカルもエモーショナルですよね。感情をそのまま音に込めていく感じの歌い方にどんどんなってきている。

「そうなんですよ。やっぱり声は指紋みたいなもので変えられないですからね。この人みたいに歌おうって思ったこともないですし……。ただ、走った時のランナーズ・ハイみたいになるよう集中して歌の状態を上げていくようにはしています。身体をリラックスさせて恍惚する状態にまで持っていけるようにするんです。そうやって歌えることが理想的ですね」

――また、ヴォーカルがこれまでになく気骨のあるものになっています。この変化は自覚しているのでしょうか?

「はい、それは感じています。例えば今回のアルバムの曲の歌詞にも、〈歌〉という言葉がたくさん出てくるんですよね。自分でも何でこんなに〈歌〉という言葉を使ったんだろう?って思っていたんですけど、歌うことが実は好きなんじゃないか?って気付いたんですよ。もともと歌が好きで音楽を始めたわけではないんで、自分でも自覚していなかったんですけど、今回のアルバムの曲を歌っていて、〈ああ、歌うのって楽しいな〉と思えたんですよ。今回のアルバム・タイトルは『Made From Nothing』っていうんですけど、これは〈無から出来た〉って意味で。その、何気ない毎日の、何もないところから出てくるのが歌であり、音楽ってことを伝えたかったんです」

――つまり、日常生活のなかでふっと感じられる無の境地にこそ音楽や歌の創作の出発点がある、というような意味ですか?

「そうです。無から生まれた音楽、という意味ですね。それがもっともダイレクトに表れたのがヴォーカルだと思います。自分でも気付かないうちに歌の重要さと楽しさを感じて、それが作品に込められていたわけですから。そういう意味ではすごく大きなターニングポイントになった作品だと思いますね」

――これまではコンポーズしたり音を組み立てていく作業にLEOさんのモチヴェーションの中心があったと思うのですが、それが歌のほうにかなりシフトしたと。

「歌に対する気持ちはあきらかに変わりましたね。だから、いろんな音楽の要素を採り入れたり、緻密な音作りをしてもフィジカルな作品になったのではないかと思っています。囁くように歌うところと、エモーショナルに歌うその幅の広さを活かしていく作品をこれからもっと作っていきたいし、もうすでにこのアルバムで出ていると思いますね。とはいえ、頭の中にあるものを形にしていく筋肉があるとしたら、その筋肉をもっともっと鍛え続けないといけないなと。歌を活かしていくためにもね。その筋肉がいまの自分の音楽を作っていますから」





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掲載: 2013年06月26日 17:59

更新: 2013年06月26日 17:59

インタヴュー・文/岡村詩野

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