INTERVIEW(2)――ドラムの音がデカイ
ドラムの音がデカイ
――同じ60年代の音楽でも、受け止め方に微妙な感覚の違いもありますよね。リアルタイム世代には意外なバンドが後追い世代の評価が高かったり、その逆もあったり。
高橋「そういうのは多いですね。ムーディ・ブルースの〈サテンの夜〉は、(後追い世代には)まったく引っ掛からなかった(笑)。〈幸宏さん、それ好きだったんですか?〉って言われて〈好きまではいかないけどさ〉とか。あと呑み屋に行ったらギターが置いてあって、酔っぱらって僕が弾くのがフリーだったり」
高桑「幸宏さんがフリーを弾いているのが可笑しくって(笑)。そういうイメージなかったから。そういえば、今回借りたスタジオにはいろんな楽器が置いてあったんです。そこにレスポールがあって、幸宏さんがそれを弾きながら〈今度のアルバム、こういうフレーズを入れたいんだよね〉って言うから、〈それ、幸宏さんが弾けばいいじゃないですか〉って。でも、まず幸宏さんがレスポールを持っている姿が可笑しくて、思わず写真撮っちゃいました(笑)」
高橋「それを誰かがTwitterにアップしたら、(くるりの)岸田君がすぐ反応してたよね(笑)」
――その幸宏さんのギターが聴けるのは、どの曲なんですか?
高橋「“Last Summer”の前半ですね。後半はジェイムズ」
高桑「あのギターは幸宏さんの音なんですよ。僕らが弾いても、ああいう感じにはならない」
――レスポールを弾く幸宏さん、確かにYMO世代からするとレアな姿だと思うのですが、高桑さんは幸宏さんのこれまでの作品をどんなふうに聴いていたんですか?
高桑「大好きでしたね、すっと聴いてました」
高橋「YMO世代だからアルファ(・レーベル)の頃だけかと思ったら、その後も聴いてたみたいで。ジャパンの解散コンサートで〈ユキヒロ!〉って叫んだんでしょ(笑)?」
高桑「そう、声枯れちゃって(笑)」
――じゃあ今回のレコーディングはスペシャルな体験ですよね。
高桑「すごいスペシャルですよ。レコーディングの最初の日、スタジオへ行ったら、ブースに幸宏さんのドラム・セットがあって、そこに〈YT〉マークがあるのを見た途端、緊張しはじめた(笑)」
――マークで緊張(笑)。ライヴでは幸宏さんと何度かいっしょに演られてますけど、やっぱり違う緊張感があったんですね。
高桑「レコーディングでは同じブースで演奏しますからね。こんなにしっかり共演したのは初めてだから、最初の3日間くらいはもう訳わかんない感じでした」
――実際に共演してみてどうでした?
高桑「ドラムの音がデカかった。僕が知っている人のなかでいちばん大きいです。でもそれを録音すると、いつもの幸宏さんのサウンドになる。ちょっと秘密を知った気がしました」
高橋「バレちゃったね(笑)」
――幸宏さんは高桑さんと共演してみていかがでした?
高橋「僕はずっとベーシストに恵まれているんですよ。細野(晴臣)さんとか小原礼とか……(後藤)次利は別の意味で派手なベーシストでしたけど。圭君はすごいメロディー・ベースなイメージがあったんです。良い曲書くし、歌いながらよくあんなに弾けるなと思ってたんですけど、ソウル系のベースも〈思いきってやっていいよ〉って言うとバリバリやるし。〈一生懸命がんばってピックでファンキーに弾いてる感じがいいな〉って言うと、堀江君と相談しながらそういうふうに弾いてくれる。いっしょにやってて、すごくおもしろかったですね」
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