INTERVIEW(2)——歌も楽器の音飾と同じに
歌も楽器の音飾と同じに
長谷川正
――そして、2曲目は、詞/曲共に正さんが書かれている“時間坂”。メランコリックな浮遊感のなかで、ノスタルジーを助長するようなアコースティックな質感がアクセントになってますね。
「そうですね。そこはさっきの音飾の話じゃないですけど、アコギか、普通にクリーン(・トーンで弾く)かっていうのは結構物議を醸したんですけど、最終的にアコギにしましたね。はじめのデモを聴いたときはクリーンかな、って思ったんだけど、曲のことをいろいろ考えはじめてからやっぱりアコギがいいなって。それでアコギのモチーフの楽曲を何曲か持ってきましたね。〈こういうイメージだよね?〉って」
――この曲に入れたいテイストのアコギの曲を?
「はい。ブレたくなくて。アコギって特に、すごく聴こえちゃうものだから、パーカッション的に入れたいのか、コードまで響かせたいのか、そのへんまで決めないと歌い方まで変わるから。自分の中ではすごくデリケートな楽器なんですよね。そこのイメージがちゃんと全員同じ方向なのかな?と思って、そういう曲を何曲か聴いてもらって、〈こういうイメージだよね?〉っていう確認をしましたね」
――その、聴いてもらって、っていうのは既存の曲?
「既存の曲です」
――ちなみに誰の曲ですか?
「絶対言いません(笑)」
――ははは(笑)。歌詞は、一言で言うと〈追憶〉がテーマかなと思うんですが、ヴォーカルに対してのディレクションなどはありました?
「なかったですね。ただ、この曲に関しては、さっきの音飾に近いようなことを初めに結構話したので。〈こういう感じで歌ったらいいかな?〉とか」
――〈こういう感じ〉とは?
「うーん……ネタバレになっちゃうからなあ(笑)」
――あっ、そこでも具体的な例が挙がってたんですね?
「そう、具体的に。…………なんかまあ、〈どれぐらいモリッシーだったらいいんですかね?〉とか、そういう感じですよ(笑)」
――〈モリッシー度〉の確認。おもしろいですね(笑)。
「(笑)どれぐらいジョニー・マーだったらいいんだろう?とか」
――ギターであれば。
「そういうことですね。いろんなものの合わせ技だから、〈モリッシーなんですかね?〉〈スザンヌ・ヴェガなんですかね?〉とか、そういう感じですね。例えると。〈ただ、あんまりモリッシーすぎると日本語に合わないよね〉とか、〈ここまでやっちゃうとネタだよね〉とか(笑)。まあ、実際録るときになったらそういうことを完全に忘れてることもあるんですけどね。やっぱりベストな音で録りたいじゃないですか、楽器の音飾と同じで。〈自分はこういうイメージだけど、この解釈は合ってるの?〉っていう話をちゃんとしてから進めていきますね」
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