インタビュー

LONG REVIEW——Plastic Tree “瞳孔”



信じる音を鳴らし続けることの正しさ



Plastic Tree



先日、UK PROJECTの所属アーティストが一堂に会して行われたイヴェント〈UKFC on the Road 2013〉の2日目は、さながらdipトリビュートのような一夜だった。dip自身が出演していたことに加え、昨年発売された『dip tribute ~9faces~』に参加していたMO’SOME TONEBENDER、POLYSICS、THE NOVEMBERS、木下理樹率いるkilling boyが顔を揃え、同じくdipファンを公言するSyrup16gの五十嵐隆も登場。さらにトリを務めたthe telephonesの石毛輝はMCでdipに対する愛情を語るなど、日本のオルタナ~サイケデリック・ロックの歴史における、dipの存在感の大きさを改めて痛感する日となったのだ。

さて、前置きが長くなってしまったが、かつてTHE NOVEMBERSと共にヤマジカズヒデとの共演経験がある有村竜太朗の所属するPlastic Treeもまた、日本のオルタナティヴ・ロックの系譜に連なる重要バンドであることは間違いない。それは、ニュー・シングルの表題曲である“瞳孔”を聴けば一目瞭然だろう。シャープなカッティングはスミス、ときおり顔を覗かせるストレンジなリズム・アレンジはXTC、そしてポップかつメランコリックなメロディーはキュアーと、この曲からは前述のバンドたちとも共通する彼らのルーツ、80年代のUKバンドの姿が確かに見て取れるのだ。メジャー・デビュー15周年にあたる昨年は、デビュー・アルバム『Hide and Seek』の〈Rebuild〉に取り組んでいたこともあって、改めてみずからの原点を見つめ直したからこそ、生まれた楽曲なのかもしれない。

一方、楽曲が一気に空間的な広がりを見せるトランシーな間奏から、大胆なブレイクを挟んでドラマ性を加速させる“瞳孔”の巧みな展開力は、さすがは長いキャリアの持ち主といったところだし、エディットされたギターと変則的なリズムが絡み合う“アイレン”では、しっかりとバンドの持つ別側面を提示してみせてもいる。区切りの年を経ても、変わることなく自身の信じる音を鳴らし続けるその姿勢に、dipが歩んでいる道と同様の正しさを見るような気持ちだ。


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掲載: 2013年09月04日 18:01

更新: 2013年09月04日 18:01

文/金子厚武