LONG REVIEW――BROKEN HAZE 『Vital Error』
日本的な感性で編まれたハイパー・メロディックなサウンド
単純に超メジャー仕事ということもあるが、浜崎あゆみのミニ・アルバム『LOVE』(2012年作)に収録された“Melody”のリミックスは、BROKEN HAZEの数多い外部ワークスにおいて間違いなく特筆すべき作品だったように思う。2010年には、AAAの浦田直也がURATA NAOYA名義で発表したあゆプロデュース/参加のシングル“Dream ON”に同曲のリミックスを提供しており、そこでの手腕が見込まれてのことであろうこの起用。彼女をデビュー時からサポートしている星野靖彦が作曲したあゆ節全開のビッグ・バラードを、その歌謡曲的な魅力を残したまま、フューチャー・レトロなシンセとバタつくビートが絡み合う最新のダンス・ミュージックへと変貌させている。
で、そんなことを踏まえつつ今回の新作『Vital Error』を聴いてみると、やはり何より耳を惹くのは、あゆのドメスティックな個性をも包み込んでしまうほどの強度と彩度を持った、クリスタルな響きのシンセが織り成す懐かしくも親しみやすいメロディーだ。ノスタルジーを喚起するある種のチープさを伴った音色は、ヴェイパーウェイヴやシーパンクな作品群ともリンクしているようで、まだ見ぬプラスティックな近未来への想像力を膨らませるもの。その甘美な幻想をフロアへと雪崩れ込ませる多彩なビートの奔流も、まるでレイヴ黎明期からベース・ミュージック全盛の現代までを繋ぐようなダイナミックさで、いわゆるポスト・インターネット世代に通じるカラフルなジャンク具合がいまの空気を反映している。
そんな、J-Pop的な泣きメロやゲーム音楽の大仰さを連想させる、日本的な感性で編まれたハイパー・メロディックなサウンドこそが、海外でも新鮮なものとして受け止められ、支持される理由なのだろう。