LONG REVIEW――ギルガメッシュ 『MONSTER』
爆発前夜のイイ予感
ギルガメッシュの作品を初めてちゃんと聴いたのは2008年作『MUSIC』だった。(その当時で言えば)THE MAD CAPSULE MARKETSを彷彿とさせる同期を多用したミクスチャー・サウンドで、いやいやカッコイイじゃないか!と。それまで自分が何となく抱いていたこのバンドのイメージを覆す……それまではどんなイメージだったんだという感じだけど、とにかくとても良い衝撃を受けたのは確か。その後、『NOW』『GO』と作品を重ねていくが、ジャケットのデザインからサウンドから、また別のモードに突入していく。それまでの彼らのサウンドのエッセンスは残しつつ、よりメロディアスで身軽なナンバーが幅を利かせるようになり――もちろんそういうギルガメッシュが(も)好きな人はたくさんいただろう。でも個人的にはそれがちょっと物足りないというか、こんなもんじゃないだろうという不完全燃焼な気持ちが常にあった。
そして今回届いたニュー・アルバム『MONSTER』。先行でリリースされた“INCOMPLETE”をはじめとするシングル群からもイイ感じはしていたけど、その予感は的中! 全体にメタルコア色が濃いめになり、ヘヴィーなサウンドを躊躇なく押し出しながら、過去2作にあったキャッチーさも上手くブレンドされている印象だ。“Drain”など今風のエレクトロニコアもありつつ、ロッキン・ドラムンベースかと思いきやメロディック・パンク~メタルコアなフレーズが展開される“VOLTAGE”のようなトリッキーなナンバーがおもしろい(痛快極まりないリリックもね)。一方で“Another way”“ALONE”といった王道感のあるストレートなロック・チューンも用意され、どの作品のタイミングで入ってきたファンも裏切らないバランスの良さ……つまりこれまでに彼らが見せてきたエッセンスを踏まえたアルバムになっているのだ。
でもまだまだ振り切れる、遊べる余地があるのでは……と感じたのは私だけ? 心から〈最高傑作だね!〉と言える作品はこれから出来るんじゃなかろうか、そんな爆発前夜のムードを『MONSTER』は湛えている。これだけでも十分に楽しめる作品だけど、聴けば聴くほどそう感じるのだ。