インタビュー

アナ 『イメージと出来事』



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[ interview ]

初めて日本語のタイトルを冠したアナの新作『イメージと出来事』が素晴らしい。これまでの彼らはポップスを志向しつつも、シンセや4つ打ちといったクラブ・ミュージック的な要素を盛り込むことで独自性を発揮してきたわけだが、2011年末にドラマーのNOMAが脱退したことをきっかけに、バンドのあり方を再編。ホーン・セクションやゲスト・ヴォーカルのYeYe、アニス&ラカンカなど、数多くのサポート・メンバーを迎え、生演奏の魅力が詰まったソウル・フィーリングたっぷりの作品を完成させた。中学時代からの付き合いである大久保潤也(ヴォーカル/ギター/サンプラー)と大内篤(ギター/コーラス)が、これまでずっと思い描いていた場所にやっと辿り着いた記念すべき作品。そんなふうに言ってもいいかもしれない。



ソウル・マナーの研究



――結論から言えば、非常にアナらしいアルバムに仕上がったと思うのですが、とはいえ、ここまで日本語のタイトルを全面に押し出した、生楽器主体のポップスになるとは思っていませんでした。2011年末にNOMAさんが脱退して以降、方向性はすぐに決まったのでしょうか?

大久保「NOMAさんがやめた時点で、どっちかだなあとは思っていて。つまり、リズム・トラックを使ってダンス寄りな方向に行くか、サポート・メンバーをいっぱい入れて、好きなことをやるかっていう。それで結果的にサポート・メンバーを探し出して、そこから誰とやるかで時間がかかった感じですね。慎重に選んだからとかっていうよりも、単純に、周りに誰もいなかったっていう(笑)」

大内「2011年の12月9日にNOMAさんとの最後のライヴがあったんですけど、月末にもう1本ライヴが決まってたんです。それでメンバーを探さないといけなくて。いまも叩いてくれてるドラムの有田(恭子)さんは高校の同級生で、東京にいるドラマーで知り合いっていうと彼女ぐらいしか思い浮かばなかったから、とりあえず頼むっていう感じで、ベースの(高垣)空斗くんはその前の9月くらいからサポートしてもらってて。だから、基本の編成はできてたんですけど、そこから〈2012年どうしよっか?〉っていうスタートでしたね」

大久保「ドラムがデカかったかもしれないですね。ドラムのタイプが一気に変わったんで、だったらそのドラムを活かせることをやろうっていうのがあったかもしれない」

――有田さんはバークリー音楽大学卒なんですよね。

大久保「だから、ドラムはすごく上手いし、いわゆるバンド界隈の人じゃないから、いろんな新しい要素が入った感じがして。ただ、〈ポップスでいこう〉みたいな感じはそんなになくて、やりながら決まっていったというか」

――もともと〈ポップス〉を志向してきたバンドですもんね。それが今回はよりはっきり出たっていうだけで。

大久保「いままでもずっとポップスをやってたつもりなんですけど、ちょっとそれを引け目に感じてたんですよね。ポップなものって、ちょっと軽く見られるところがあると思うんです。僕がすごく尊敬してる人たち――堂島孝平さんやカジヒデキさんとかも、軽く見られてしまった時期ってあったと思うんですよ。だから、いままでは4つ打ちとかのクラブ要素を入れてみたり、ちょっとマイナーな雰囲気を入れたりとか、あえてポップさを隠すということをしてたんですよね。でも、2011年とか2012年ぐらいから、インディー界隈でも普通にポップなものが評価されはじめて、そこに関しては、僕たちはずっとやってきた自信があるから、〈じゃあ、もうそのまんまやりましょう〉っていう、吹っ切れた感じはありますね」

――もちろん、一言でポップスといってもいろんなタイプのものがありますが、やっぱりソウル・フィーリングを感じさせるところに、渋谷系をルーツに持つアナらしさが出てるなって思うんですよね。

大久保「今回はマーヴィン・ゲイとかスティーヴィー・ワンダーとか、ソウルのホントに基本的なところを聴き直しました。最近シティー・ポップって言われるバンドがたくさん出てきてるけど、そこに括られちゃうのはちょっと嫌だなっていうのもあって(笑)。結局、大瀧(詠一)さんとかも、ソウルのマナーがしっかり入ってるじゃないですか?」

――山下達郎さん然りですよね。

大久保「達郎さんはまさにそうですよね。今回まずサンプル盤を作って配ったら、〈シュガー・ベイブっぽい〉ってすごい言われて……っていうのも恐れ多い話なんですけど(笑)、でも実際にレコーディング期間中に聴いてたのは、さっき言ったような60~70年代の海外のソウルで、そこのマナーをずっと研究してたんです」


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掲載: 2014年01月29日 17:59

更新: 2014年01月29日 17:59

インタヴュー・文/金子厚武