Wienners “LOVE ME TENDER”
[ interview ]
でんぱ組.incへの楽曲提供に続いて、ゆずの楽曲のアレンジを手掛けるなど、活動の幅をますます広げている玉屋2060%(ヴォーカル/ギター)率いるWienners。最新シングル“LOVE ME TENDER”は、〈疾走感とスケール感の同居〉というこれまでのテーマを踏襲しながらも、“LOVE ME TENDER”と“LIFE IS BEAUTIFUL”の2曲で闇からの再生を描いたコンセプチュアルな意欲作に仕上がっている。クリエイターの抱える孤独、4つ打ちが飽和状態にあるバンド・シーンへの回答、そして秋葉原と西荻窪の不思議なリンクまで、幅広い話題が飛び交った玉屋とのインタヴュー、ぜひお楽しみあれ。
自分のやってきたことを変えずに、どう説明するか
――昨年のシングル『蒼天ディライト/ドリームビート』もそうだったと思うんですけど、いまのWiennersはより間口を広げる方向に向かってると思うんですね。そういうなかで、先日玉屋くんはゆずの“Ultra Lover Soul”のアレンジを手掛けていて、間口の広さという意味では、過去最大だったと思うんですよね。
「間違いなくそうですね。最初は〈俺でいいんすか?〉みたいな感じでしたけど、これは絶対やらないと、って。もし挫折を味わうことになったとしても、いま経験としてやっておかないとって感じでやらせていただいて、結果的におもしろく出来たと思うし、北川さんとかも楽しんでやってくれたんで、ホントいい経験になりましたね。いままでは間口を広げるとは言っても、ロックというカテゴリーのなかだったというか」
――でんぱ組.incへの曲提供はあっても、ゆずと比べると全然距離は近いですもんね。アレンジに関して、方向性の提示はあったんですか?
「ありましたね。昭和歌謡テイストみたいなものを、当時の感じでそのままやるんじゃなくて、現代でそれをやったらどうなるか。〈ネオ昭和歌謡〉っていうキーワードがありました」
――Wiennersの曲にも歌謡曲っぽさ、和の感じっていうのがあるから、そこでのリンクがありつつ、いまの感じを出してほしかったっていうことなんでしょうね。
「これはよく言うんですけど、昭和というか、大正、明治、もっと言うと、江戸時代ぐらいの、まだ発見されてない音楽があったとして、それが2014年に発掘されて聴いてみたら、〈意外と現代のポップスに近いものがあるぞ〉みたいのを想像してやってるところがあるんです。どこか異国の地にもジャニーズとかAKB48みたいなのがいて、日本と同じようなポップスをやってたりとか、そういうことが全然関係ないところで同時多発的に起こってて、意外とやってることが近いみたいな、そういうのを想像してやってる感じなんですよね」
――曲を仕上げるなかで、どんな発見がありましたか?
「僕がすごく感じたのは、聴いてる側がどういう状態で曲を聴いてるのか、ライヴで手を叩きながら聴いてるのか、カラオケでみんなで歌ってるのか、聴き手側の参加の仕方まで考えるっていう。もっと間口を広げるには、そういうとこまで考えないと引っ張り込めないんだなって、それはめちゃめちゃ勉強になりました」
――それにしても、“Ultra Lover Soul”っていうタイトルからして、ゆずは攻めてるよね(笑)。
「そうですよね。他の曲でもヒャダインとやってたり、おもしろかったですね。あと、タンバリンがめっちゃ上手かったです(笑)」
――ストリートで培った技が(笑)。そんな経験もありつつ、今回のシングル“LOVE ME TENDER”っていうのは、以前からずっと言ってる〈疾走感とスケール感の同居〉がありつつ、そのうえでより間口を広げるっていうのがテーマだったのかなって思ったのですが。
「少し前までは、間口を広げるっていうことがあんまりよくわかってなくて、広げるべきだって言われても、〈いや、ここは譲れません〉で終わっちゃってたんです。でも間口を広げることのホントの意味って、わかりやすいほうに寄せるってことじゃなくて、いままで自分がやってきたことを一切変えずに、それをどうやって説明するかを考えることなんだって思ったんですね。去年シングルを作ったり、でんぱ組.incに曲を書いたりするなかで、そういうことが自分のなかで消化できたんで、そこを特別気にしなくても、いまだったらちゃんと説明できる曲が作れるなって思って」
――なるほど。
「だから、今回はとにかく自分の聴いてほしいものだけを見つめて作ったんですけど、少し前だったら、たぶん1分半とかの短い曲になってたと思うんです。でも、今回は聴いてる側に鮮明に情景を描いてほしいっていうのがあって、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏、それぞれのパートに、ちゃんと聴く側が追いつけるようになってると思います。いままでは場面展開すると、聴いてる側がまだこっちにいるのにもうそっちに移っちゃったって感じだったと思うんですけど、今回は〈いまこの場面にいます〉っていうのを確認しながら変わってる。でも、疾走感もちゃんとあるっていう、そういうものが出来たかなって」