INTERVIEW(3)――ラーメンを作るなら、まずもやしから
ラーメンを作るなら、まずもやしから
――音楽的な部分で言うと、前作の“蒼天ディライト”では、あえて歌ものの4つ打ちをやったわけですけど、それを踏まえて、リズムのアプローチに関しては今回どんなことを考えましたか?
「今回はすごくシンプルな8ビートの曲ってイメージですけど、僕はやっぱりもともと細かいリズムが好きで、ファンクだったり、16で刻んでるようなのが好きなんですよね。あと手法的にしっくりくるなって思ったのが、“LOVE ME TENDER”のなかに三拍子になるところがあるんですけど、そこはギター、ベース、ドラム、シンセ、歌、全部でひとつのビートを形成してるんです。『UTOPIA』に入ってた“MIDNIGHT EXPRESS”がまさにそういう作り方だったんですけど、今回の三拍子のところもそういう感じで、ギターとキーボードを合わせて初めてひとつのリズムになって、ベースとドラムを合わせて初めてひとつのリズムになって、それが全部鳴って、歌が乗っかると、さらにひとつの三拍子になる。そういう作り方が自分に合ってるなって改めて思って、たぶん細かいのが好きなんです。こんな壮大なことをやろうとしながら(笑)」
――いまの話ってすごく大事で、最近よく話してるんですけど、勢いとか音の厚みって、BPMとかアンプのつまみを上げれば上がるわけじゃなくて、やっぱり楽器のコンビネーションで作るもので、それがバンドだと思うんです。最近、薄い4つ打ちの曲が増えてきているのも、そこに対する意識の薄さが原因だと思ってて。
「そうっすね。いまってすごい簡単にカッコイイ音楽が作れるっていうか、よくわからないままバーッてレコーディングしても、コンプをガツッとかけて、べチャッとして、ドンってすれば、なんかドーンとした音に聴こえるっていうのがあって」
――擬音ばっかりだったけど(笑)、でもニュアンスはわかる。
「コンプでつぶした平面的な、ぬりかべみたいな音って、俺はあんまり好きじゃないんですよね。もちろん、そういうのもあっていいし、メロコアとかはむしろそうであってほしいんですけど」
――全部の楽器が同じように出るタイプの楽曲であれば、平面的でもいいってことだよね。
「そうですね。でも、自分たちとしては立体的に、コンプでつぶすんじゃなくて、ちゃんと隙間があって、でもすごくレンジが広いっていうものを考えますね」
――コンプでつぶした音も、シンプルな4つ打ちも、それはそれでカッコイイんだけど、やっぱり誰にでもできるし、平均化しちゃう。ラーメン美味いのはわかるけど、たまにはカレーも食いたいじゃんみたいな、そういう話だよね(笑)。
「ホントそうなんですよね。例えば、ラーメン二郎のラーメンを食べて、〈俺もラーメン屋やろう〉って思ったときに、毎日ラーメン二郎で食べて、それで自分のラーメンも作っちゃう。そうじゃなくて、まずはもやしをすげえ食べて、〈もやしってこういうことか〉って考えるみたいな、もやし、キャベツ、にんにく、麺、スープ、いろんなものの組み合わせでラーメンが出来てるわけだから、そこを考えるべきだと思うんですよね」
――その例えすごいわかりやすい。ってか、二郎はコンプでつぶしたラーメンだよね(笑)。
「ガッチガチですよね(笑)」