LONG REVIEW――Wienners “LOVE ME TENDER”
〈目くるめく〉を地で行くポップ体験
メジャー・デビュー以降、ソングライターである玉屋2060%の外仕事などを挿んで約8か月ぶりに届けられたニュー・シングル“LOVE ME TENDER”。表題曲とそこから間断なく続く“LIFE IS BEAUTIFUL”は、玉屋が創作活動における迷いや不安を振り払い、いま鳴らしたい音を掴み取るまでの物語をファンタスティックな比喩で綴った連作だ。
虹色のシンセをたなびかせ、力いっぱいの8ビートのなかに脱臼気味のリズム・アンサンブルを交えながら駆け抜けた先にあるのは、巻き上がる轟音と晴れやかな咆哮。そうした大きなカタルシスと共に闇が光に溶け込んでいくようなアウトロに導かれ、聴き手のサウンドスケープは、疾走感をキープしたままメロディアスなシンセ・サウンドを軸とする“LIFE IS BEAUTIFUL”へ。どこか愛らしさを湛えたインストゥルメンタルに思わず笑顔がこぼれる……のだが、照れ隠しなのか何なのか、ここで終わらないのがWiennersというバンドである。
そんなわけで本作のラストを担うのは、ヤケクソ・スピリッツ(!?)全開で妄想の〈ジュリアナ東京〉を立ち上げる“ジュリアナ ディスコ ゾンビーズ”。リアルタイムの世代ではないからこその想像力を弾けさせ、〈ジュリアナ東京〉から連想される〈狂騒感〉や〈煌びやかさ〉を極限まで肥大化したファンキーなファストコア×テクノ・ポップ・チューンでゴリゴリと攻め立てる。ジュリアナと言えば……な、あのリフも高速を保ったままピコピコと散りばめ、ある種、暴力的な躁状態に翻弄されているうちに〈あれっ? 終わり!?〉というエンディング。
そもそもなぜジュリアナなのか……という疑問を置き去りにする点も含め、Wiennersらしいロマンティシズムとユーモア、そして西荻流儀のミクスチャー感覚をギュッと凝縮した全3曲。コンパクトながら、〈目くるめく〉を地で行くポップ・ミュージック体験を約束する一枚と言えるだろう。