INTERVIEW(2)――身を削って、悩んで、もがいた形跡を残したい
身を削って、悩んで、もがいた形跡を残したい
――資料のセルフ・ライナーノーツを見ると、〈夜の闇〉の話が出ていたりして、つまりは結構内にこもってる時期を経て、今回の作品が生まれてるってことなのでしょうか?
「そうですね……まあ、やっぱりいろいろあるんで(笑)」
――タイトルからして、〈優しくして〉だもんね(笑)。
「〈ちょっといいすか?〉みたいな(笑)。僕は結構心配性で、ビビりなんで、夜とかよく不安になるんですけど、モノ作りしてる人って、やっぱりみんな孤独だと思うんですよね。それってメンバーがいたりとか、仲良いやつがいるっていう次元じゃないところの孤独で、そういうものを背負ってる人たちって、みんな夜中にウワ―ッてなると思うんですよ。それがいい方向に行けばいいんだけど、全然良い曲が出来なくて、〈俺ミュージシャンでも何でもねえな〉とか思うと、〈だったら、どうやって生きていこう?〉みたいな。真面目に働けるような人間でもないから、結婚もできない、家も買えない、〈死んじゃうぞ?〉って」
――行くとこまで行っちゃうと、そうなっちゃうよね。
「そのつぶされそうで、眠れなくて、どうにかなりそうな感じって、たぶんみんなホントは覗いてほしいと思うんですよ。見られたくはないんだけど、でもちょっとはわかってほしい。結局今回の曲って、それだけなんです。闇から逃げ出そうと必死にもがいてる姿みたいなのを、ちょっとだけ知ってほしい。誰にも少なからずそういうところはあると思うから、わかってくれる人もすげえいるんじゃないかなって」
――いまって音楽の消費のサイクルが速いとかってよく言われるけど、それってまさにそういう創作の過程、生みの苦しみが伝わってないからっていうのもあるんじゃないかな。だから、大事なのはそこのプロセスだっていうのは間違いないと思う。もちろん、音楽だからただ楽しめればいいとも思うんだけど、作り手が何を考えて、どこに苦心してこれを作ったのかっていうところにまで目を向ければ、音楽の楽しみ方がもっと膨らむはずだって思うんですよね。
「僕も音楽のエンターテイメント的な部分は大好きですけど、聴いててグッとくるのは、何でもない1個のフレーズだったりするんです。Cでジャーンと鳴らしただけでも、どれだけ悩んで作ったのかっていうのは伝わると思うから、自分たちもそういうものが作りたい。なので、今回は自分以外のメンバーにもそれを求めて、俺が作ったフレーズを忠実に再現するだけじゃなく、欲しいのは気持ちの部分で、下手くそでもいいし、ダサいフレーズでもいいから、身を削って、悩んで、もがいた形跡を残してほしくて」
――結果的に採用されるフレーズが玉屋くんのものであっても、そこに至る過程が大事だったと。
「そういうのって、それこそでんぱ組.incをやったりして、改めて思ったことなんですよね。そういう人たちって、人の作った曲を歌うわけじゃないですか? でも、それを自分のやり方でやろうとしていて、そういうのを見ると、〈やっぱり、こうだよな〉って」
――今回“LOVE ME TENDER”から2曲目のインスト“LIFE IS BEAUTIFUL”って、シームレスに繋がってるじゃないですか? これは再生していく流れっていうか、“LOVE ME TENDER”で〈夜の闇〉の深いところまでいって、それを抜けた先に“LIFE IS BEAUTIFUL”があるっていうことだと思うんですね。
「まさに、その感じで、“LOVE ME TENDER”のなかで〈LIFE IS BEAUTIFUL 喜怒哀楽の連続〉って言ってるように、やっぱり〈喜〉だけじゃなくて、苦しいことも経験してこそ、人生は素晴らしいって改めて言えるなって思って。自分はいつもそうなんですけど、このふわっと広がる気持ちっていうか(笑)、〈幸せ〉に近い感情、たぶん〈愛〉なのかなって思うんですけど、それを表現するときって、いっつもインストなんですよ。たぶん、そこに言葉なんていらないと思ってるんですよね」
――Wiennersって一方ではすごくヴィヴィッドだけど、その〈ふわっ〉を表現するバンドでもあるよね(笑)。
「久石譲とかに近いと思ってるんですけど、『となりのトトロ』の“風のとおり道”っていう曲があって、ああいう雰囲気っていうか、メロディーだけで気持ちが高まるみたいな、そういうのがすごく好きなんですよね」