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第45回――テディよ永遠に

リイシューforゴールデンウィーク(適当)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2010/06/05   23:30
更新
2010/06/05   23:32
ソース
bounce 320号 (2010年4月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

まずは、フィリー・ソウルとの縁も深い名プロデューサー/ソングライター、ヴァン・マッコイのお仕事を集めた便利なコンピ『A Van McCoy Songbook 1962-1973: The Sweetest Feeling』(Kent/Ace)を大推薦。ディスコの大衆化を誘因した〈ハッスル〉の印象からか軽視されがちな人ですが、いくつものレーベルで裏方として重用され、ジェリー・バトラーやグラディス・ナイト、アーマ・フランクリン、そしてメルバ・ムーアらを手掛けてきたヒットメイカーの本質はここにあるのですよ。

続いてはギャンブル&ハフとは別方面からフィリー・ソウルの土壌を築き上げてきたトム・ベル絡みで……フィリス・ハイマンの83年作『Goddess Of Love』(Arista/Reel Music)が注目すべき初CD化! トムの6曲にナラダ・マイケル・ウォルデンの3曲という布陣で、往時のウリが後者の賑やかなシンセ・ファンクだったのは明白ですが、ハデさはないものの丁寧に紡がれたトム組による仕事ぶりもいま聴けば上々です。

80年代モノでは、メアリー・ウェルズの82年作『In And Out Of Love』(Epic/Reel Music)も初CD化。60年代が華々しすぎるだけにこの時期は聴いたことがないという人も多いのでは? モータウン時代を連想させる仕掛けもまぶした聴きやすい作りながら、1曲だけマイゼル兄弟によるティーナ・マリー風の痛快ファンク“Gigolo”があり。ラップにもビックリです。

80年代からもうひとつ。アイズレー・ブラザーズから年少の3人が離脱して生まれたユニット、アイズレー・ジャスパー・アイズレーの84+85+87年作を2CDにまとめた『Broadway's Closer To Sunset Blvd/Caravan Of Love/Different Drummer』(Superbird)も待望。昨今のブギー解釈も可能なデジタル・ファンクからプリンス風、そして本家に劣らぬスロウまで、取っ散らかった〈やりたいこといっぱい!〉的な感じが最高です。

で、何の脈絡もなく70年代に戻って……スタックスからエピックに移ったソウル・チルドレンの76+77年作を2in1にパックした『There Always: Finders Keepers/Where Is Your Woman Tonight?』(Shout!)が到着。それぞれドン・デイヴィス、デヴィッド・ポーターという縁のある腕利きが手掛けただけあって、スタックスの延長にある濃厚なサザン・ソウルの真骨頂が品良く楽しめます。

最後は前回紹介したグルーヴスヴィル盤と同じ体裁で、同じく60年代デトロイト・ソウル史の一端を紐解けるコンピ『The Sound Of Sidra』(Outta Sight)を推薦! シドラなるレーベルの音源を通じて60年代後半デトロイトの熱気が押し寄せてくる良質盤ですよ。

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、コンピ『A Van McCoy Songbook 1962-1973: The Sweetest Feeling』(Kent/Ace)、フィリス・ハイマン『Goddess Of Love』(Arista/Reel Music)、メアリー・ウェルズ『In And Out Of Love』(Epic/Reel Music)、アイズレー・ジャスパー・アイズレー『Broadway's Closer To Sunset Blvd/Caravan Of Love/Different Drummer』(Superbird)、ソウル・チルドレン『There Always: Finders Keepers/Where Is Your Woman Tonight?』(Shout!)、コンピ『The Sound Of Sidra』(Outta Sight)

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