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プライオリティ

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Discographic
公開
2010/06/17   16:40
更新
2010/06/17   16:49
ソース
bounce 320号 (2010年4月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次

 

NY以外のヒップホップが未開拓だった80年代、LAから乾いた空気と危険な薫りを届けたレーベルがあった――以降のシーンを揺るがす逸材を次々に輩出し、いままた新たなる歴史を刻みはじめたプライオリティの歩みを、今回は数々の名盤と共に振り返ってみよう!

 

SnoopDogg -A

プライオリティといえば、いわゆる〈ギャングスタ・ラップ〉の総本山とされるレーベルだ。確かに、悪名高いNWAを送り出してヒップホップの勢力図を一気に書き換えてしまったのだから、そう見るのも間違いではないだろう。ただ、スタートの時点では必ずしもそういった意図を持つレーベルではなく、当初は他社の音源からコンピを作って出したりしていたという。

K・テルで重役を務めたブライアン・ターナーらがプライオリティを設立したのは85年。が、その歴史はNWAのブレイクと共に始まったと言っていい。チャート成績は振るわなくとも、地元やストリートの支持を得て莫大なセールスを上げるローカルなヒップホップに可能性を見い出したプライオリティは、比重を一気に転換させ、90年代初頭にはEMIとディストリビューション契約を締結。98年にはEMI傘下に入ってインディー・レーベルとしての歴史を終えるものの、その姿勢は一貫してキープされ、アイス・キューブらのNWA一派はもちろん、マスターPやジェイ・Zもここから全国区の存在に育っていったのだ。

2001年には経営統合でキャピトル内の一部門となり、2004年にその名前は一度消滅する。が、20周年を契機にブランド名としてのみ復活。昨年末にはスヌープ・ドッグと契約し、同時に彼が〈クリエイティヴ・チェアマン〉としてリリースの舵取りを担っていくことも発表された。NWAの正統後継者とも言えるスヌープの存在がこのブランドをどう動かしていくのか、これからが楽しみだ。

 

▼関連盤を紹介。

左から、95年のサントラ『Friday』(Priority)、マスターPの97年作『Ghetto D』(No Limit/Priority)

 

▼レーベル復活前後のスヌープのアルバムを紹介。

左から、2002年作『Paid Tha Cost To Be Tha Boss』、2010年作『More Malice』(共にDoggystyle/Priority/Capitol)

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