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プライオリティ

ディスクガイド―(2)

連載
Discographic
公開
2010/06/17   16:40
更新
2010/06/17   16:49
ソース
bounce 320号 (2010年4月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/出嶌孝次、升本 徹

 

PARIS 『Guerrilla Funk』 Scarface(1994)

現在はみずから別ジャケで復刻しているパリスの代表作で、ノリの良いファンクに乗せてパンサーの革命思想を説く〈危険〉な一枚。メジャーでの発売を 拒否されたアイス・Tの『Home Invasion』を引き受けたり、往時のプライオリティはまさにインディー精神の塊だったのだ。*出嶌

E.S.G. 『Sailin' Da South』 Perrion(1995)

テキサスのリヴィング・レジェンドはデビュー作『Ocean Of Funk』をローカル・ヒットさせたことでプライオリティとの契約をゲット。この一発目のリリースに“Swangin' & Bangin'”や“Smoke On”など代表曲のリテイクを収録。その名を西海岸ファンにも広めた。*升本

JAY-Z 『Reasonable Doubt』 Roc-A-Fella(1996)

忘れられがちだが、インディペンデントなレーベルだったロッカフェラも第1弾の本作(のUS盤)だけはプライオリティ配給。それに加え、メロウなネタ使いやシンガーとのコラボも交えたことが、NYメイドでありながら西海岸でも評判となった由縁なのだろう。*升本

MASTER P 『Ice Cream Man』 No Limit(1996)

キューブ一派に替わる90年代プライオリティの稼ぎ頭といえばノー・リミット軍団だろう。ニューオーリンズからオークランドにやってきたこのマス ターPがイージー・Eを真似て自動車のトランクで自作のテープを売りはじめたことから、現在にまで至る南部産ヒップホップの隆盛が始まった。“Mr. Ice Cream Man”“No More Tears”などのハスリング噺を並べた本作では、いわゆる〈スキル〉のなさもトラックのチープさもすべて味として聴かせるモッタリした作風を自前のチー ムだけで完成。次作『Ghetto D』がいきなり全米1位に輝く下地を作り出した。23枚(!)ものアルバムを投下してシーンを制圧した98年には、スヌープを軍団に迎え入れている。*出嶌

WESTSIDE CONNECTION 『Bow Down』 (1996)

シーン内での西海岸軽視に鉄槌を喰らわすべくアイス・キューブが決起。WCとマック10が賛同し、プライオリティ在籍勢のなかでもひときわウェッサイ濃度の高い3MCの結集となったユニットのデビュー作。大ヒットしたタイトル曲はウェッサイ・アンセムとなった。*升本

KILLARMY 『Silent Weapons For Quiet Wars』 Wu-Tang(1997)

ウータン・クランの絶頂期に乱立した関連レーベルのうち、プライオリティ配給で誕生したのがウータン・レコーズ。サンズ・オブ・マンらも在籍したが、マッシヴな良作を出していたのはオハイオ出身の4thディサイプルが組んだこの殺人軍団だろう。*出嶌

SOULJA SLIM 『Give It 2 'Em Raw』 No Limit(1998)

親友ジュヴィナイルとの共演曲“Slow Motion”(2003年)が死後にNo.1を記録したニューオーリンズのラッパー。ノー・リミットの勢いに乗じたB級の存在と見られていたが、ズルムケなフロウをかます天才肌なスタイルはこのデビュー作の時点で確立されてるよ。*出嶌