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4AD

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Discographic
公開
2010/10/15   14:11
更新
2010/10/15   14:20
ソース
bounce 325号 (2010年9月25日発行)
テキスト
文/村尾泰郎

 

設立から30年以上を経た現在もなお、独自のカラーを保ちながら、インディー・ロック・シーンにフレッシュな風を送り続けている4AD。今秋も注目タイトルが続々とリリースされるなか、いま一度このレーベルの歴史を名盤と共におさらいしてみようじゃないですか。さあ、アナタを退廃的で耽美的な夢の世界にお連れいたしましょう……

 

70年代の終わりにUKでは数々のインディー・レーベルが設立されたが、なかでも鮮烈な美意識で人気を誇ったのが4ADだった。アイヴォ・ワッツ・ラッセルとピーター・ケントが79年にロンドンで立ち上げたこの4ADは、ピーターが別のレーベルを新設するために辞めて以降、音楽オタクだったアイヴォの趣味が全開。バウハウスやバースデイ・パーティのようなゴシック・ロック・バンドや、コクトー・ツインズやデッド・カン・ダンスといった耽美的なグループの作品を次々とリリースしていく。また、レーベルには23エンヴェロープという専属のデザイン・チームがいて、彼らがアートワークやポスターを一手に担うことで独自のカラーを打ち出すことにも成功した。

そして、UKニューウェイヴが終息していった80年代後半、レーベルはひとつの転機を迎える。交通渋滞中に偶然聴いたデモテープが気に入って、アイヴォはUSのバンド、スローイング・ミュージズと契約。さらにバンドと会うために渡米した際に、メンバーから彼らと交流があったピクシーズのデモテープを渡される。やがて4ADからデビューしたピクシーズはUKで大きな反響を呼び、これらUS組の活躍によって4ADは〈ニューウェイヴのレーベル〉というイメージを脱却することに成功するのだ。その勢いに乗り、90年代に入ると本格的にUSへと進出。ブリーダーズ、ヒズ・ネーム・イズ・アライヴ、レッド・ハウス・ペインターズといったバンドを通じて、USインディー・シーンに足場を築いていったのである。

名物オーナーのアイヴォがレーベルを去った現在でも、4ADはTVオン・ザ・レディオやディアハンター、セント・ヴィンセントなどUSインディー・シーンの人気アクトに、UKのビッグ・ピンク、アイスランドのヨハン・ヨハンソン、ノルウェーのセレナ・マニッシュなどなど、ワールドワイドに個性豊かなアーティストをラインナップ。老舗レーベルとしての風格を感じさせつつも、常に時代の空気を吸い込みながら変化していくオルタナティヴな精神は失われていない。

 

▼4ADからリリースされた作品の一部を紹介。

左から、クラン・オブ・ザイモックスの85年作『Clan Of Xymox』、スローイング・ミュージズの91年作『The Real Ramona』、ガス・ガスの99年作『This Is Normal』(すべて4AD)

 

▼2010年に4ADからリリースされたアルバムの一部を紹介。

左から、エフタークラング『Magic Chairs』、セレナ・マニッシュ『No 2: Abyss In B Minor』、ティンダースティックス『Falling Down A Mountain』(すべて4AD)

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