カリンバ・プロの立役者は、もちろんEW&Fの構成員だけではない。なかでも重要なのは、プロダクションの共同設立者ながらも76年5月に急逝したチャールズ・ステップニーだ。ロータリー・コネクション〜ミニー・リパートンやマリーナ・ショウ、デルズ、テリー・キャリアーらの名作群で知られる彼は、EW&Fと関わる前から名を成していたシカゴの大物プロデューサー/アレンジャーである。モーリス・ホワイトにとってはチェス時代からの兄貴分なわけで、その支えを失った痛手は大きかったはずだ。
そんなステップニーを継いで、ホーン・アレンジを担ったのが同じくシカゴのトム・トム84だ。カリンバ・プロのトレードマークにもなった彼の小気味良いサウンドの凄さは、ジャクソンズとの仕事(や以降のマイケルへの影響)からも容易に理解できる。また、ソングライト面で活躍したのは“Can't Hide Love”で知られるスキップ・スカボロウだ。カリンバでの書き下ろしで有名なのはエモーションズ“Don't Ask My Neighbors”だろうが、EW&F一派との仕事を契機にビル・ウィザーズ“Lovely Day”で飛躍、アルトン・マクレイン&デスティニー仕事ではトム・トムと組んでカリンバ流儀を模倣もしつつ、70〜80年代屈指の名曲メイカーとして名を馳せていく。
で、その“Lovely Day”を共同制作したクラレンス・マクドナルドも忘れちゃいけない鍵盤奏者。ジェイムズ・テイラーらの作品で〈西海岸〉なノリを体得してきた彼がカリンバの音に洗練性を吹き込んだのは間違いない。洗練という意味では、スカイラーク時代の“A Long Way To Go”をエモーションズが歌っていたデヴィッド・フォスターも重要。ARCのLAサウンド化を推進した彼は、その成果を持ち帰ったエアプレイを経て業界最大のヒット請負人に成長していった。こうして見ると、EW&F軍団が凄まじい才能集団だったこともよくわかるだろう。
▼関連盤を紹介。
左から、ミニー・リパートンの71年作『Come To My Garden』(GRT)、ジャクソンズの78年作『Destiny』(Epic)、スキップ・スカボロウの書いた曲を集めた編集盤『Skip Scarborough Songbook』(Expansion)、ビル・ウィザーズの77年作『Menagerie』(Columbia)、ジェイムズ・テイラーの77年作『In The Pocket』(Warner Bros.)、スカイラークの編集盤『Wildflower』(Capitol)、エアプレイの80年作『Airplay』(RCA)