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第54回――カリンバの響き

カリンバ軍団〜ARCファミリーの残した名盤たち――(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2011/07/21   18:34
更新
2011/07/22   10:46
ソース
bounce 334号 (2011年7月25日発行)
テキスト
ディスクガイド/林 剛、出嶌孝次


DENIECE WILLIAMS 『When Love Comes Calling』 ARC/Columbia/BBR(1979)

ジョニー・マティスとのデュエット企画を挿み、ARCと契約しての3作目。モーリスは“Why Can't We Fall In Love?”で声を重ねたのみで、デヴィッド・フォスターとレイ・パーカーJrがディスコとAORを両輪に全編を制作。TOTOやジェリー・ヘイなど、直後に登場するマイケル・ジャクソン『Off The Wall』と演奏陣がほぼ同メンツ……ということで、当時のLA最先端らしい洒脱な仕上がりだ。*出嶌

 

SPLENDOR 『Splendor』 Columbia/ソニー(1979)

後にボビー・ナンとしてモータウンからソロ・デビューを果たすロバート・ナンをリード・シンガーに据えた、女性メンバーも含む7人組バンド。カリンバ・プロ所属ではないものの、フィリップ・ベイリーが中心となって手掛けた本作はEW&Fのスムース&メロウ・サイドを拡大したような感じで、どの曲もソウルフルで完成度が高い。表題通りのディスコ・ナンバー“Take Me To Your Disco”はEW&Fといい勝負だ。*林

 

DENIECE WILLIAMS 『Niecy』 ARC/Columbia/Reel Music(1982)

ローラ・ニーロで知られる“It's Gonna Take A Miracle”がR&Bチャート1位を記録して、ARCでの有終の美を飾った佳作。引き続きトム・ベルを共同プロデューサーに据え、ボビー・イーライら演奏陣もほぼ同じ。スキップ・スカボロウ作の“Love Notes”をカヴァーしているあたりには往時のカリンバ感もあるか。この後のデニースは84年の『Let's Hear It For The Boy』にて一気にポップ・ブレイクを果たすことに。*出嶌

 

DENIECE WILLIAMS 『My Melody』 ARC/Columbia/BBR(1981)

通算4作目、ARC契約後では2作目となるデニース嬢のアルバム。ただしEW&Fの面々はまったく関与しておらず、アルバム全編を取り仕切ったのはフィラデルフィア・ソウルの重鎮トム・ベルだ。録音はフィリーのシグマ・スタジオで行われ、後にモニカ“Everything To Me”で引用される朗らかなバラード“Silly”をはじめ、ポップで流麗なサウンドに乗って持ち前のキュートな歌声を放っている。*林

 

PHILIP BAILEY 『Chinese Wall』 Columbia(1984)

ジョージ・デューク制作の『Continuation』(83年)に続く、〈EW&Fの声〉のソロ2作目。モーリスの反対を振り切ってフィル・コリンズ主導のモダン・ポップに挑む一方、EW&Fが訣別したフェニックス・ホーンズとトム・トム84を迎えたのはモーリスへの異議か。米英No.1を獲得したフィルとのデュエット“Easy Lover”はやはり強力だが、映画「クロッカーズ」で使われた名曲“Children Of The Ghetto”など聴きどころは多い。*出嶌

 

AFTERBACH 『Matinee』 ARC/Columbia/DIZZARE(1981)

後のブラコン時代に裏方として名を上げるロバート・ブルッキンスとその兄弟マイケルによるデュオがARCから放った一枚。制作はヴァーディン・ホワイトとビロイド・テイラーで、エモーションズも参加した本作は、スウェイ・ビート的な“It's You”や快活なファンク“Wanna Fill You Up”など、EW&Fにも似たパワフルで鮮やかな好曲が並ぶ。80年代のEW&Fは彼らの力をもっと借りてもよかった!?*林

 

MAURICE WHITE 『Maurice White』 Columbia(1985)

本隊の休止期間に作られた(現時点で)唯一のソロ・アルバム。駄作と評されたEW&F『Electric Universe』と同じくロビー・ブキャナンやマーティン・ペイジを参謀に据えたあたりには意地も窺えるが、ほぼ歌い手に徹した主役の温かい歌声も相まって、ブラコン時代のムードにしっとり寄り添う佳作になっている。“Stand By Me”の都会的な変体カヴァー、スロウの逸曲“I Need You”、アフリカ志向のナンバーまで粒揃いだ。*出嶌

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