DENIECE WILLIAMS 『This Is Niecy』 Columbia/ソニー(1976)
モーリス・ホワイトとチャールズ・ステップニーが手掛けたカリンバ・プロ初期作のひとつである、ワンダーラヴ出身シンガーの処女作。キュートな高音ヴォイスをEW&Fの軽快かつメロウなサウンド上で解き放った好盤で、後にシャンテ・ムーアらが歌った“Free”の収録でも有名だろう。ミディアム〜バラードでのチャーミングな歌唱は、かつてステップニーが関わったミニー・リパートンを彷彿させたりも。*林
THE EMOTIONS 『Rejoice』Columbia/ソニー(1977)
モーリス・ホワイトと組んだアルバムのなかでも突出したクォリティーと人気を誇るエモーションズの代表作。スウェイ・ビートの名曲としても知られる“Best Of My Love”を筆頭に絶頂期EW&Fのサウンドを真正面から浴びているが、彼女たちならではの美しいハーモニーを活かした音作りにも注目したい。とりわけジェイドなどにカヴァーされたバラード“Don't Ask My Neighbors”が素晴らしい出来。*林
D.J. ROGERS 『Love Brought Me Back』 Columbia/ソニー(1978)
ゴスペル・クワイア出身の漢がシェルター〜RCAを経てコロムビアから放った初作。カリンバ・プロ作品ながらEW&Fの関与はないものの、ホーンやパーカッションなど随所にEW&F的な意匠を施し、ロジャースはスケールの大きな声でミディアムやバラードを熱く歌う。バックはジェイムズ・ギャドソンらの腕利きで、盟友のギャップ・バンドも参加。最後はウォルター・ホーキンスのゴスペル曲でルーツ回帰。*林
THE EMOTIONS 『Flowers』 Columbia/ソニー(1976)
シカゴ出身ながらメンフィスで研鑽を積んだ〈スタックス版シュープリームス〉のコロムビア移籍作。似た道程でキャリアを構築してきたモーリス・ホワイトも深く思い入れたのか、EW&Fの中核を動員してステップニーと共同プロデュースにあたっている。メンバーが自作した“I Don't Wanna Lose Your Love”などもEW&Fさながらの意匠でシャープに響き、スタックス時代とは異なる優美さをグループにもたらすことに成功。*出嶌
POCKETS 『Come Go With Us』 Columbia/ソニー(1977)
ヴァーディン・ホワイトがロバート・ライトと組んで手掛けた、〈EW&Fの弟分〉とも言われるファンク・バンドのデビュー盤。EW&F同様軽快なサウンドを身の上とするが、表題曲を筆頭にボトム太めで骨っぽくエネルギッシュに迫るあたりは、モーリスではなくベース奏者のヴァーディンがプロデュースにあたったせいか。小気味良く雄大に迫るアップ“Nothing Is Stronger”ではトム・トム84の管弦アレンジも光る。*林
POCKETS 『Take It On Up』 Columbia/ソニー(1978)
引き続きヴァーディン・ホワイト&ロバート・ライトが手掛けた2作目は、のどごしの良い爽快な夏向きの良品! トム・トムのアレンジなど布陣に大きな変化はないが、フュージョン・インストの小品“Sphinx”なども含めてメンバーの嗜好がグッと前に出てきて、兄貴分とは異なるライトな方向性が確立されている。ジェリー・ヘイらを動員してカリンバ色の薄まった次作『So Delicious』(79年)も機会があれば聴いてほしい。*出嶌
DENIECE WILLIAMS 『Song Bird』 Columbia/ソニー(1977)
ジェリー・ピータースがモーリスの制作補助を務め、管弦アレンジをトム・トム84が手掛けた2作目。キュートで溌剌とした前作の流れを汲みながらも、エリック・アイズナー作“The Boy I Left Behind”のようなミディアムなど、アーバンでやるせないムードが漂い、ファンクからゴスペルまでヴァラエティー豊かな内容となった。特にアル・ジョンソン作の“We Have Love For You”にグッとくる。*林
THE EMOTIONS 『Sunbeam』 Columbia/Expansion(1978)
モーリス・ホワイトとのタッグによる3枚目。前2作の流れを汲む内容だが、アル・マッケイがペンを交えた“Smile”“Whole Lot Of Shakin'”といったダンス・ナンバーは、EW&Fの“September”にも似たキャッチーさで気分が上がる。スキップ・スカボロウとモーリスの共作曲“Walking The Line”でのハーモニーやエウミール・デオダート作の神秘的なスロウ“Spirit Of Summer”におけるスキャットの美しさにも降参。*林