【付録6】推薦盤紹介~アンドレアス・シュタイアー
【アンドレアス・シュタイアー Andreas Staier】
1955年ゲッティンゲン生まれ。ハノーヴァーとアムステルダムでピアノとチェンバロを学び、1983~86年までムジカ・アンティクァ・ケルンのチェンバロ奏者として活躍。その後ソロ活動に加え、リート伴奏、室内楽奏者としても引っ張りダコの存在。2002年にはバード作品集をリリース。今や当代随一のドイツ・リート解釈者という定評を確立した感のあるプレガルディエンとの名コンビで、シューベルトの「冬の旅」を初めとする歌曲集も数多く手掛け、いずれも最高級の評価を受けている。(音楽出版社,2012/07/30更新)
『ベートーヴェン:ディアベリ変奏曲』
〈ショッキングなペダル使い! 霊感と気魄に満ち満ちたディアベリ〉
ベートーヴェンが腕によりをかけて主題を変容させた「ディアベリ変奏曲」。近年誰もがアクセス可能となったベートーヴェンの自筆譜ファクシミリを入念に研究し、グラーフモデルのファルテピアノを用いて演奏した説得力満点の演奏です。さらにチェルニー、フンメル、カルクブレンナーなど同時代の他の作曲家の手による変奏も収録。シュタイアーによる「イントロダクション」にも注目してください。1819年、ベートーヴェンが発注を受けた際に残したスケッチに着想を得てシュタイアーが創りあげたイントロダクションは、幻想的で不思議な即興演奏のような空気の中、時折ベートーヴェンのソナタの断片を思わせるようなモティーフもちりばめられていて、実に面白い仕上りとなっています。ディアパゾン金賞受賞、レコード芸術特選盤。
『ドゥシェク:ピアノ協奏曲ト短調』
〈当時の聴衆を熱狂させたロマン派の先駆者〉
チェコで生まれ、ヨーロッパ各地で活躍、クレメンティを名声を分かちあったという作曲家ドゥシェク(ドゥシーク)(1760-1812)。「全ての作曲家の中で、最も正直、かつ礼儀正しく、最も優れた男」と老ハイドンが賞賛したとも伝えられます。彼は20曲近くのピアノ協奏曲を書き、また多くのピアノ・ソナタを書きました。あまりにもピアノの腕がすばらかったため、ロンドンのピアノ製作者であり友人でもあったジョン・ブロードウッドは、彼のためにピアノに1オクターブを加えたほどでした。シュタイアーは、この録音のために1806年に製造された楽器を用い、コンチェルト・ケルンが闊達な伴奏を付けています。劇的なト短調協奏曲は必聴。ナレーション付きでマリー・アントワネットの悲劇を描いたピアノ曲《フランス王妃の受難》も時代を反映した興味深い作品。