ボストリッジの新録音はパッパーノのピアノ伴奏による4人の作曲家の歌曲を集めた『レクイエム~戦争の悲哀』
[Warner Classics 公式チャンネルより]
2018年11月11日は第一次世界大戦が終結してから100年を迎える日。ワーナー・クラシックスを代表する音楽家、ボストリッジとパッパーノはこの日のために4人の作曲家の歌曲を集め「レクイエム」と名付けて世に問います。
全19曲からなる収録曲は、いずれも19世紀の終わりから20世紀、第二次世界大戦の開始に至るほぼ50年に渡って作曲されたもの。大戦が始まる前にこの世を去ったマーラー以外は、全て戦争体験者であり、クルト・ヴァイルはドイツから亡命、ルディ・シュテファンとジョージ・バターワースの2人は戦争で命を落としています。しかし、ボストリッジは「これらの歌は世界大戦から直接影響を受けているわけではない」と指摘し、独自の解釈で全ての歌を歌い上げます。
バターワース、シュテファンの歌では、いつもの溢れるような表現力は抑えめに、淡々と、時には甘さや妖艶さも込めながら曲の持つ味わいを表現しています。
ホイットマンのテキストに曲を付けたヴァイル作品でも、ブロードウェイのミュージカルを思わせる派手な歌い方の中に、甘さと冷静さを感じさせる歌唱が見事です。
しかしマーラー作品では一転、ボストリッジ、自家薬籠中の物である表現力の高さが炸裂。「Revelge=起床ラッパの意味」では凄惨な行進曲のリズムに乗って、死に向かって突き進む少年の生きざまが、まるで目の前で見ているかのように語られていきます。
伴奏のパッパーノのピアノも超絶的に素晴らしい演奏。普段はオーケストラを自在に操るパッパーノ、ここでもピアノから重厚で多彩な響きを紡ぎ出し、時にはボストリッジを超えるほどの雄弁な表現力を見せ、作品に対する熟考のアプローチを見せまています。
戦争に対する普遍的な悲しみ、恐怖だけでなく、隠された死への甘美な憧れまでにも光をあてた魅力的なアルバムの登場です。
(ワーナーミュージック)
『レクイエム ~ 戦争の悲哀』
【収録曲】
1) ジョージ・バターワース(1885-1916):歌曲集『シュロップシャーの若者』
2) ルディ・シュテファン(1887-1915):連作歌曲集『われ君に高雅なる歌を歌わん』からの6つの詩
3) クルト・ヴァイル(1900-1950):『4つのホイットマン歌曲』
4) グスタフ・マーラー(1860-1911):『少年の魔法の角笛』より「惨殺された鼓手」「トランペットが美しく鳴り響くところ」「少年鼓手」
【演奏】
イアン・ボストリッジ(テノール)
アントニオ・パッパーノ(ピアノ)
【録音】
2018年、ロンドン、ハムステッド、セント・ジュード=オン=ヒル教会
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2018年08月31日 00:00