Pentatone~2025年4月発売新譜情報(4タイトル)
CD(4タイトル)
■作品詳細
今回はビシュコフ&チェコ・フィルによるマーラーの交響曲全曲録音からメゾ・ソプラノのカトリオーナ・モリソンを独唱に迎えた「交響曲第3番」に、アラベラ・美歩・シュタインバッハーがベートーヴェン再録音と世界初録音となるジョルジュ・レンツの協奏曲を収録したアルバム、カリーナ・カネラキス&オランダ放送フィルによるバルトークの「歌劇『青ひげ公の城』」、ロイス&カペラ・アムステルダムによるラッススの傑作「7 つの懺悔詩篇曲」のCD4タイトルがリリースされます。
マーラー:交響曲第3 番 ニ短調(2枚組)
セミヨン・ビシュコフ(指揮)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
2018 年10 月よりチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者・音楽監督を務めるセミヨン・ビシュコフによるマーラーの交響曲全曲録音。当アルバムはメゾ・ソプラノのカトリオーナ・モリソンを独唱に迎えた交響曲第3 番です。
当団にとってマーラーの全曲録音は1976 年から1982 年にかけてのヴァーツラフ・ノイマンとの録音以来。オーストリアで活躍したマーラーですが生まれは当時のオーストリア帝国に属するボヘミア王国のイーグラウ近郊のカリシュト村(現チェコのイフラヴァ)。この全曲録音は当団にとって重要なプロジェクトとなっております。
「マーラーの交響曲は人生の“ポリフォニー” を表現するものであり、これらの作品を録音することは、生涯をかけて抱いてきた夢、そして喜びです」と語るビシュコフ。温かく優しい音色を全面に引き出し、マーラーが描いたボヘミアの香り高き演奏を聴かせてくれます。
交響曲第3 番はワーグナーを思わせる豪華な木管と金管に、多数の打楽器、アルト(メゾ・ソプラノ)独唱、女声合唱、少年合唱も登場する大規模かつ並外れた傑作。2 部構成全6 楽章、演奏時間は100 分以上の大曲。ことに終楽章の深く吸い込まれるような音楽は、これまでに書かれた音楽の中で最も美しい旋律といえます。
近年、英グラモフォンのオーケストラ・オブ・ザ・イヤーを受賞したチェコ・フィルハーモニー管弦楽団。PENTATONEレーベルからこれまでにマーラーの交響曲第1・2・4・5 番(2022-2023 年)、スメタナの「わが祖国」、ドヴォルザークの交響曲第7・8・9 番(2024 年)、いずれもビシュコフ指揮で録音しております。
(PENTATONE)
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲、レンツ:ヴァイオリン協奏曲「...to beam in distant heavens...」
アラベラ・美歩・シュタインバッハー(ヴァイオリン)、グスターボ・ヒメノ(指揮)ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
「叙情と情熱のバランスのよさ―彼女の長所は、とりわけ磨き抜かれたテクニックと美しく多彩な音色にある」(ニューヨーク・タイムズ誌)と絶賛されるドイツを代表するヴァイオリニスト、アラベラ・美歩・シュタインバッハー。待望のベートーヴェンの協奏曲再録音とジョルジュ・レンツのヴァイオリン協奏曲の世界初録音が実現しました。共演はグスターボ・ヒメノ率いるルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団です。
シュタインバッハーにとってベートーヴェンは最も神聖かつ崇高なもの。2004 年、チョン・キョンファがパリ公演をキャンセルした際、サー・ネヴィル・マリナーからオファーを受け、急遽フランス国立フィルハーモニック管弦楽団と演奏した、自身にとって最も大切なレパートリーです。アンドリス・ネルソンス指揮、ケルンWDR 交響楽団と2008 年に録音したシュタインバッハーの代表盤がありますが、15 年ぶりに再録音を決意。この作品に対し常に新たな視点を見出すことに余念がないシュタインバッハーが今描くベートーヴェンを艶のある音色で奏でます。
1965 年ルクセンブルクで生まれ、ルクセンブルク音楽院、パリ国立高等音楽院、ハノーファー音楽大学で作曲を学んだジョルジュ・レンツ。1990 年よりオーストラリアに移住したレンツの音楽は、天文学、文学、オーストラリアの風景、アボリジニーなど、精神的な信念、疑念を作品に反映させています。
2018 年、シュタインバッハーからの依頼で作曲をはじめたヴァイオリン協奏曲は、イギリスの異色の詩人・画家ウィリアム・ブレイク(1757-1827)の『エルサレム』の壮大な詩の中の「...to beam in distant heavens...(... 遠い天を照らす...)」からインスピレーションを得ていて作曲されました。
〈戦争、貧困など私たちの地球の破壊が止められそうにないことに深い悲しみを感じています。ある夜、私は100 年後の子孫たちが今の世界を切ない思いで振り返る姿を想像してしまいました。私はこの作品中「“An Elegy for our Grandchildren’s Planet” 孫たちの惑星へのエレジー」と名付けた楽章にこの思いをのせました。「遠い天空」は実際にはまったく遠いものではないのかもしれません。2100 年の子孫たちから見れば今の世界と同じかもしれません〉と語るレンツ。独奏ヴァイオリンが「暴力」と「天使のような愛」という、相反するものの間に揺れ動く感情を表している衝撃的かつ立体的な協奏曲です。
ベートーヴェンとレンツという冒険的なカップリングですが、ベートーヴェンと対をなす光り輝く作品といえます。作曲家と時間をかけ作り上げたシュタインバッハーの奥深い表現に加え、ヒメノ率いるルクセンブルク・フィルが世界初録音にふさわしい名演を聴かせます。この作品は2025 年6 月、京都市交響楽団 第701 回定期演奏会で日本初演予定です。
シュタインバッハーは2 つの異なる銘器で演奏。ベートーヴェンはジュゼッペ・グァルネリウス・デル・ジェス(1698-1744)が1744 年頃に製作した “Ex Sainton” 、レンツはアントニオ・ストラディヴァリが1718 年頃に製作した “Ex Benno Walter” で演奏。楽器の音色の違いも楽しめます。
(PENTATONE)
バルトーク:歌劇『青ひげ公の城』(全1幕)
カリーナ・カネラキス(指揮)オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団、ガボール・ブレッツ(バス=バリトン)、リナート・シャハム(メゾ・ソプラノ)
いま最も注目されている指揮者の一人カリーナ・カネラキス。2019 年よりオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めています。PENTATONE レーベルからバルトークの『4 つの管弦楽曲』『管弦楽のための協奏曲』をリリースし、「実に魅力的で見事な音楽設計」(BBC Music Magazine 誌)、「指揮とオーケストラが繊細さと炎の両方でサウンドスケープを描いている」(Grammophon 誌)と評され、グラミー賞にノミネートされるなど世界的に高く評価されました。
同コンビによるPENTATONE レーベル第2 弾はバルトーク唯一のオペラ『青ひげ公の城』です。登場人物は青ひげ公とその新妻ユーディトというわずかふたり、全1 幕のオペラながら、大編成の管弦楽によって激烈なドラマが展開されます。この作品はバルトークの妻マールタに献呈されています。
カネラキスはこの作品を「人生、はかない美しさ、人間であること、愛、そして死へのオマージュである」と表現。これまで何度も同作品を演奏した経験のあるリナート・シャハムとガボール・ブレッツを独唱に迎え、ドラマティックに演奏しています。
パールマンの演奏に惹かれヴァイオリンを習い始めたというカネラキスはアメリカ出身の指揮者、ヴァイオリニスト。カラヤン・アカデミーの学生時代にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のヴァイオリン奏者を経験。そのときカネラキスが第1ヴァイオリン奏者として演奏したシェーンベルクの『浄夜』を聴いたサー・サイモン・ラトルが指揮者としての才能を見出したことがきっかけで、ヴァイオリンを学びながら指揮者の道も目指しました。
2013 年にプロの指揮者としてデビュー。以後着実にキャリアを積み、2019 年よりオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、ベルリン放送交響楽団の首席客演指揮者、2020 年9 月からはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者に就任。2025 年7 月には東京都交響楽団の定期、都響スペシャルに登場予定です。
(PENTATONE)
オルランドゥス・ラッスス:7つの懺悔詩篇曲(2枚組)
ダニエル・ロイス(指揮)カペラ・アムステルダム
パレストリーナと並ぶ盛期ルネサンスの巨匠オルランドゥス・ラッススが20 代半ばで書き上げた傑作「7 つの懺悔詩篇」をダニエル・ロイス率いるカペラ・アムステルダムが録音!
ローマ・カトリックの規範に沿ったミサ曲を作り続け、教会音楽の作曲の手本とされていたパレストリーナとは対照的に、若年期からイタリアをはじめとするヨーロッパ中を渡り歩き、ミュンヘンの宮廷でバイエルン公に仕えるようになってからも各国の音楽を取り入れ、多種多様な作品を生涯に渡って作り続けたラッスス。「7つの懺悔詩篇曲」は数多いラッススの作品の中でも若き日の傑作とされています。
この曲集は、バイエルン公アルブレヒト5世の命により、1559 年頃に作曲されました。7 つの楽曲は、7つの大罪に対してその懺悔を示す内容を持ち、テキストは旧約聖書のダヴィデ詩篇の中から内容に適した詩篇が選ばれています。アルブレヒト5 世は、この作品を大変気に入り、宮廷に仕えていた人文主義学者ザムエル・クヴィッヒェベルクに取り上げた詩篇の注釈を付けさせ、また宮廷画家のハンス・ミーリヒに細密画を描かせ、豪華な4 巻組の写本を製作させました。以後、この曲集は、ミュンヘン宮廷での演奏以外は許されない門外不出の曲集でしたが、アルブレヒトの死後、1584 年になってようやく出版されました。
7曲は基本的にすべて5声の作品で、7つの異なる教会旋法を用いたモテトゥスの様式で作曲されています。テキストの内容に沿った表現をするためにあえて禁則的な進行や和音まで駆使した意欲作でした。その音楽の表出力は、現代の聴き手である私たちにも強く訴えかけてくるものがあります。
この曲集の先行録音は、当時、優れた楽団を有していたバイエルン宮廷の状況を鑑み、声楽に器楽を重ねた演奏で臨むものが多いのですが、ダニエル・ロイス率いるカペラ・アムステルダムは、ソプラノ4、アルト2、テノール5、バス4 というアカペラの編成をあえて選択。テキストの音楽化による強い表出力がより前面に打ち出されたすばらしい歌唱でこの傑作に応えています。30 年以上、カペラ・アムステルダムの音楽監督を務め、このコンビで世界的な音楽賞を数多く受賞してきたダニエル・ロイスとカペラ・アムステルダムの長年の信頼関係が成す一体感がもたらす歌唱には、抜群の説得力があります。ロイスの意図を見事に表したカペラ・アムステルダムの精緻なアンサンブルと高い表現力は、ラッススのこの傑作の真価を問うものと言えるでしょう。
ブックレットには、現在はバイエルン州立図書館に所蔵されているこの曲集の大変美しい写本に含まれる図版が数種掲載され、またこの写本のデジタル・データにつながるQR コードも掲載されているので、データをダウンロードしてこの曲集をヴィジュアルの面でも愉しむことができます。当時の高い名声や音楽史上の重要度にかかわらず、現代では確たる再評価にまで至っていないラッススという作曲家のすごさを存分に認識できるすばらしい録音の登場です!
(PENTATONE)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2025年03月21日 17:00